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【ものづくり補助金】生産性向上とOEMによる新収益源の構築

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これまで手作業で製造していた労働集約型事業の場合、設備投資による機械化で生産性が大きく向上します。その一方で、次のような問題が起きる可能性も考えられます。

「生産性が高くなりすぎて、製造しても自社で販売しきれない

「販売しきれないため機械をフル稼働できず、投資資金返済用の利益を確保できない

生産性が高くなりすぎて自社で販売しきれない恐れがある場合、導入設備の余力を活かして「OEM受託」をすることも解決策として考えられます。ここでは、個人経営の洋菓子製造販売業(洋菓子店)を例に、OEM受託のメリットと、設備導入の際に「ものづくり補助金」を利用するメリットお伝えしていきます。

 

製造小売での生産性向上の必要性 

個人経営の洋菓子店では、多くの製造が自店舗の厨房にて手作業で行われています。洋菓子製造は工程が多く非常に手間がかかるものです。労働集約型であるために、次のような問題を抱えているかもしれません。

・人材難で技術力のある人材の確保ができない。

・働き方改革で労働時間削減を迫られている。

・製造ができないために商品棚を空けてしまい、機会損失が起きている。

・品切れが多いため顧客離れが起きている。

こうした問題は、洋菓子店と同様に製造小売を行うパン店、和菓子店、弁当・そうざい店、また食品業界以外でも起きています。そこで、思い切って機械導入をすることにより、これらの問題を解決できるかもしれません。

機械導入による製造能力の大幅向上

例えば、バレンタインギフトの定番であるボンボンショコラ(一粒チョコレート)や、チョコレートコーティングクッキーでは、チョコレートを溶解後に「テンパリング」という職人技術を要する作業で温度を整え、さらに、一つ一つ手作業によりクッキー等をチョコレートでコーティングするといった手間のかかる一連の作業が必要です。

しかし、「テンパリング機能付きエンローバー」を導入することで、大幅な効率化を図ることができます。テンパリングからコーティングまで、半自動化で時短となるばかりでなく、熟練技術者に頼らずにチョコレートクッキーやボンボンショコラの製造ができるようになります。機械でチョコレートを適温に溶解し、温度調整するなどの段取時間(ほぼ自動処理)を除けば、コーティング作業時間を1/10以下に短縮することができます。しかも、テンパリング済ですぐに使用できるチョコレートを常時供給できる体制になるので、ほかのチョコレート使用ケーキの作業にも、段取作業なく使用でき、お店全体での生産性向上に役立ちます。さらに、チョコレートは高付加価値商品として高単価設定が可能ですので、チョコレートを使用した商品を増やすことができれば利益率向上にも役立ちます。

洋菓子店における機械導入のメリットは作業時間の大幅短縮

このように「テンパリング機能付きエンローバー」を導入するメリットは次のとおりです。

・熟練技術が必要なチョコレートコーティングの作業時間を1/10以下にできる。

熟練技術者以外でもチョコレートの製造作業ができる。

・テンパリング済みチョコレートをケーキ等の作業にも使用し効率化が図れる

・チョコレートを使用した高付加価値商品の品揃え充実で利益率が向上する。

「テンパリング機能付きエンローバー」の設備例はこちらからご覧いただけます(英語)。 

国内代理店:シービーエム株式会社 

「テンパリング機能付きエンローバー」の設備例は洋菓子店で有用な機械設備はほかにも、「スチームコンベクションオーブン」、「ウォーターカッター」、「ワンショットデポジッター」「包あん機」等があり、上記に近い効果が得られることが多いでしょう。

製造能力の大幅向上によるジレンマ

このように、生産性向上に大いに役立つ機械導入ですが、販売を自店舗に限っている場合は、製造しても商品の販売が追い付かず、せっかく設備投資をしたにも関わらず、稼働率を低くせざるを得なくなってしまいます。製造に特化した工場で、販路を十分に確保できる場合はよいのですが、個人経営の場合は販路の拡大まで求めていないケースも多くあると思います。その場合、冒頭のように

「生産性が高くなりすぎて、製造しても自社で販売しきれない

「販売しきれないため機械をフル稼働できず、投資資金返済用の利益を確保できない

といった問題が起きてしまいます。そのような場合は「OEM受託」が解決策の一つになるかもしれません。

 

導入機械の余力を利用したOEM受託を新たな収益源に

OEMとは「他社名義の商品製造」

OEMとはOriginal Equipment Manufacturingの略で、「相手先ブランド製造」と訳されます。製造者(受託者)が他社(委託者)の名義やブランドの製品(商品)を製造するものです。委託者がOEM受託者から仕入れ、自社製品のブランド名や商品名を付けて自社で販売します。

車の場合はダイハツが開発・製造・販売している車をトヨタに供給し、トヨタが自社の商品名で販売するといったケースです。この場合は

受託者=ダイハツ

委託者=トヨタ

という関係になります。車の場合は大規模なものですが、パソコンや化粧品、アパレル等で行われているビジネスモデルです。特に製菓、食品業界では広く浸透していてOEM専業メーカーも数多く存在しています。

なお、OEMと似たものに、ODM(Original Design Manufacturing)やPB(private brand)と呼ばれるものもあります。ODMとは、製造だけでなく商品企画までを委託する手法です。一方でPBとは、受託者は製造だけを担当し、委託者(小売店・卸売業者)が企画・販売するブランドのことです。

一般的には工場規模の製造者がOEM受託を行うケースが多いですが、昨今は機械設備の製造余力を利用してOEM受託を行う個人経営の製造者も出てきています。中小企業や小規模事業者も十分取り組めるものです。

OEM受託と競合他社との関係

機械導入をする場合に、ぜひおすすめしたいのが、製造余力を活用した他社商品のOEM受託製造です。ここで言う「他社」は自社の競合に相当することが多いかもしれません。同業他社も同様に人材難や生産性の悩みを抱えていることが多いからです。

一昔前ですと、競合会社の商品を自社が代わりに製造することなど考えられませんでしたが、人材不足が深刻、かつ、地域連携が求められる昨今の社会情勢では、こうした連携も選択肢として十分検討の余地があります。どうしても競合関係が気になる場合は、他地域から受託すればよいでしょう。全国規模のOEMマッチングサイトもありますので、参考になさってみてください。

食品開発OEM.JP 食品に特化したOEMマッチングサイト 

リンカーズ 一般製造業向け、生産委託等のマッチングサイト 

OEM受託のメリットは設備稼働率向上と新たな収益源の構築

前述の機械導入による自社の生産性向上のほかに、製造余力を活用したOEM受託のメリットには次のようなものがあります。

1.機械稼働率が向上することで、商品あたりの固定費を低減でき、設備投資資金の回収スピードを上げることができる。

2.新たな収益源となる事業を構築することで、将来のリスク分散ができる。

3.アイドルタイムの人材を有効活用することができる。

4.商品開発や製造技術のノウハウを蓄積することができる。

このように、設備導入には生産性向上といった「守り」のメリットのほかに、新たな収益源の確保という「攻め」の効果の一石二鳥を期待することができます。

注意したいOEM受託のデメリット

一方で、OEM受託によるデメリットも考えられます。

1.短納期で受注した場合、自社分の製造が後回しなる。

2.自社商品と似た商品が他社で販売される場合、カニバリゼーション(共食い)になる恐れがある。

3.契約で取引条件を双方で合意されていないとトラブルに発展する恐れがある。

これらのデメリットには次のような対策が必要です。

1.自社製造に影響を及ぼさないような無理のない受注締切日を設定する

2.商圏が異なる委託先から受託する

3.取引条件を契約書で明確にし、合意しておく

OEM委託側の最大のメリットは設備投資せずに品揃え拡充ができること

OEM委託側のメリットには次のようなものがあります。OEM受託の営業をする際の参考になさってください。

1.設備投資せずに品揃えの拡充ができる。

2.より重要な商品製造(例えば、利益率の高い手の込んだケーキ)に集中できる。

3.人手不足が原因で製造できないことによる機会ロスを解消できる。

4.必要な分だけ製造を発注できるので在庫リスクを低減できる。

OEM受託の確認ポイント

OEM受託に踏み出す前に、確認しておきたい主なポイントとしては次のようなものがあります。

1.委託者の品質レベルに自社が適合しているか?
委託者の販売先(百貨店に出店している場合等)によっては、高水準の品質規格、例えばHACCP、ISO 22000、FSSC 22000などの認証が求められることもあります。

2.「製造所」等の表示が必要

委託者の商品ラベルに、自社が「製造所」や「加工所」として社名と住所の記載(開示)がされる場合があります。この表示方法について詳しくは「消費者庁による「早わかり食品表示ガイド」(令和5年3月版)PDFのP13や、消費者庁のサイトでご確認をお願いいたします。

3.取引条件を契約書で定める

両者の責任範囲の明確化や、万が一の品質面の事故対応、取引条件を定めた契約書を準備することをおすすめします。これについては経済産業省が推奨する契約書フォーマットを参考にするとよいでしょう。

このほかに、自社リソースのマネジメントとして、本業とOEM事業の優先順位付けや、作業者の時間配分等にも注意が必要です。

 

設備投資でぜひ検討したい「ものづくり補助金」

ここまでOEM受託のメリットや注意点等をご案内してきましたが、中小企業や小規模事業者にとって、設備投資の際にぜひ検討したい、資金面の強力なサポートとなるのが「ものづくり補助金」です。

ものづくり補助金の概要

ものづくり補助金(正式名称:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、「中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)等に対応するため、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援するもの」(ものづくり補助事業公式HPより)です。

通常枠の場合は「革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援」するもので、設備投資額のうち、1/2~2/3が後日補助されます。上述の例の場合ですと、「テンパリング機能付きエンローバー」の購入経費、据付・運搬費用等が補助対象となります。

ものづくり補助金の審査項目

ものづくり補助金への公募の際に提出する事業計画書における、主な審査項目は次のとおりです。

■技術面          

・製品やサービスの開発が革新的であるか?

・課題解決の方法が明確で具体的か?

■事業化面       

・事業化の方法・スケジュール等が具体的か?

・製品・サービスの市場性はあるか?

・企業の収益性・生産性は向上するか?

■政策面          

・地域経済への貢献など、国の政策に合致しているか?

出典:ものづくり補助金の書き方 | 経済産業省 中小企業庁 (mirasapo-plus.go.jp)

 

ものづくり補助金事業計画書の記載内容とポイント

ものづくり補助金の事業計画書では、審査項目を踏まえて次のようなポイントに留意して記述することをおすすめします。

■事業の現状
補助事業の必要性などを念頭に置きながら、現在の事業の状況、今までの自社の取り組み等を書きます。人手不足の状況や手作業での製造状況を明らかにします。

■課題と解決策 

課題の項目別に、課題に対応する解決策(取組内容)を箇条書きで書いていきます。例えば、生産性向上の課題に対して、解決策として機械導入の方法を記述します。生産性向上による製造余力の活用という課題に対して、解決策としてOEM受託の方針を記載します。

■解決策(取組内容)

取組内容をより具体的に書きます。写真や図表を入れるとよいでしょう。導入予定の機械の特徴や性能、生産性がどの程度向上するのか、客観的なデータを記載します。さらに、OEM受託でどのような商品を製造し、収益面やその他の面でどのような効果があるかを記載します。

実施体制・スケジュール 

設備等の型番や性能、導入時期、実施体制などを具体的に記載します。予め、OEM委託者の内諾を得ておくと、計画がより具体的となり説得力が増します。

■将来の展望

事業の市場規模、顧客等について記載します。今回の事業により、市場において競争力・優位性が高まることを示しましょう。機械導入による事業効果(見込)について、自社の生産性向上やOEM受託による収益力向上について、算出根拠を示しながら、具体的な数字を記載します。

■会社全体の事業計画

5カ年の事業計画目標を具体的な数字で記載します。上記の事業効果の算定根拠と整合性を取りながら、会社全体の売上、収益計画を策定します。「付加価値額」や「給与支給総額」等についても記載します。

その他、当該年度の公募要領で記載が求められている事項について記載するほか、年度により加点項目が異なるので、できるだけ加点が得られるよう準備することをおすすめします。

 

まとめ

今回は、機械導入による生産性向上と製造余力を活用したOEM受託、ものづくり補助金の活用についてご案内して参りました。ポイントをまとめると次のとおりです。

・労働集約型事業は機械導入により大幅な生産性向上が期待できる。

・製造余力を活用したOEM受託は新たな収益源となる。

・OEM受託は実現可能性を確認する。

・ものづくり補助金ではポイントを押さえて事業計画書を記述する。

現在、労働集約型で機械導入をお考えの事業者様は、ものづくり補助金への公募も視野に入れながら、OEM受託を検討されてはいかがでしょうか?

当社、アクセルパートナーズは、ものづくり補助金について100社以上の支援、採択された実績がございます。応募申請だけでなく、その先の交付申請、実績報告といった手続きのサポートまで、サービスメニューをご用意しております。

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この記事の監修

アクセルパートナーズ 代表取締役二宮圭吾

中小企業診断士
株式会社アクセルパートナーズ代表取締役 二宮圭吾

WEBマーケティング歴15年、リスティング・SEO・indeed等のWEBコンサルティング300社以上支援。
事業再構築補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金等、補助金採択実績300件超。
中小企業診断士向けの120名以上が参加する有料勉強会主催。

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