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【IT導入補助金】最低賃金の引上げが求められることがある?

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IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者の幅広い事業者が補助を受けられる対象になります。
ただし、単にIT化を図りたいだけでは申請が認められないばかりか、交付されたIT導入補助金の返還を求められることがあるので注意しなくてはなりません。具体的には、ITツールの導入により生産性の向上や労働環境の改善、賃金アップなどの目標を達成することが必要です。中でも、IT導入補助金のいくつかの種類の中の通常枠B類型は最低賃金の引上げについて厳しい要件が課されています。
この記事で、IT導入補助金における最低賃金の引上げについて確認していきましょう。

 

通常枠の概要とB類型について

IT導入補助金にはいくつか種類があり、通常枠を申請する事業者は、事業者が自社の課題を明確にしたうえで、その課題の解決につながるITツールを導入し、それによって業務効率化や売上アップを目指すことが求められます。
通常枠にはA類型とB類型がありますが、A類型の補助金額の下限と上限は5万円以上150万円未満であり、B類型の補助金額の下限と上限は150万円以上450万円以下とA類型より高いです。より多くの補助金が交付されるため、賃金引き上げといった厳しい要件を確実にクリアすることが求められています。もし達成できないと、達成できなかった年度に応じた返還を求められるので注意が必要です。

通常枠B類型で求められる要件

IT導入補助金を申請するには、種類を問わず、補助事業を実施することで労働生産性の伸び率を1年後は3%以上、3年後は9%以上の実現可能かつ合理的な目標を定めた計画を作成しなくてはなりません。これに加えて、通常枠B類型を申請するにあたっては、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させることと、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準する賃金引上げ計画を策定することが求められます。
事業場内最低賃金とは、申請を行った事業者が複数の事業場を持っている場合には、その事業場内で最も低水準にある事業場の賃金のことです。事業場が1つしかなければ、その事業場の最低賃金が事業場内最低賃金となります。それを地域で公表されている地域別の最低賃金と比べて、プラス30円以上高くしなくてはなりません。この目標を定めた賃金引上げ計画の内容については、交付申請前に従業員に対して表明することが求められます。
経営陣だけが掲げていても、従業員に知らせていなければ、うやむやにされるおそれがあります。しっかりと事前に従業員に表明し、経営陣をはじめ従業員も一体となって、IT導入補助金によって導入したITツールの有効活用を図っていくことが必要です。 ITツールの活用により、コスト削減や業務効率化などを行うことで、最低賃金の引上げを達成していくことが求められます。事前に従業員に表明していることで、従業員の監視の目も働きますし、従業員も賃上げにつながるよう、せっかく導入されたITツールを使いこなそうと努力することが期待できます。

賃上げ表明をしなかった場合

IT導入補助金の交付申請時に、賃上げ計画について従業員に表明したと申告したにもかかわらず、実際には表明していないことが発覚した場合、IT導入補助金の返還を求められるため、注意しなくてはなりません。うっかり忘れて、交付申請後に慌てて行っても要件は満たしません。必ず、交付申請を行う前に全従業員に対して、最低賃金の引上げと給与支給総額を増加させるという賃金引上げ計画について説明しておく必要があります。

賃金引上げができなかった場合

策定した賃金引上げ計画目標が事業計画終了時点で達成できなかった場合や事務局へ期間内に報告をしなかった場合は返還を求められます。報告をしないという義務違反だけでなく、頑張ったものの目標をクリアできなかった場合にも、天災に遭遇するなどの特別な事情がない限りは返還を求められるので、賃上げ計画の達成について甘く考えてはいけません。

事業場内最低賃金の増加目標が未達だった場合

事業計画の実施期間は3年間ありますが、毎事業年度の3月時点において、事業場内最低賃金の増加目標が達成できていないと、補助金額の全部もしくは一部の返還を求められます。そのため、3年間でクリアするというのではなく、1事業年度ずつしっかりと目標をクリアしていけるよう、経営努力を重ねていかなくてはなりません。
なお、付加価値額増加率が年率平均1.5%に達しない場合、大地震や水害といった天災による被害が起こったなど、事業者の責めに帰さない事由により達成できなかった場合には補助金の一部返還は求められません。
ここでの付加価値額とは粗利益のことを指します。粗利益は、売上高から原価を控除して求めます。

補助金の返還額について

事業場内最低賃金の増加目標が未達だった場合の補助金返還額は、補助金額を労働生産性の計画目標年数である3年で除した金額に、3年間のうち目標未達年以降の年数を乗じた金額で算出されます。未達となって返還を行うと、翌年度以降の事業実施効果報告は不要となり、その後に未達となっても返還は求められません。
これはどういうことかというと、1年度目でクリアできないと、全額返還を求められ、2年度目以降は返還するものもなくなるためです。1年度目はクリアできても、2年度目はクリアできないと、2年度目と3年度目分の返還が求められるので、それ以降は返還すべきものがなくなり、報告義務も返還も求められないという意味です。とても厳しい要件となっていますので、確実に一年度ごとに目標が達成できるように経営努力を重ねなくてはなりません。
IT導入補助金を無駄にしないよう、導入したITツールをどのように活用すれば、業務効率化によって残業代が減らせたり、アルバイトなど余剰人員を抱えることがないかを検討したり、ペーパレス化や作業の手間を減らしてコストダウンを図り、その分を賃上げに回せないか、しっかり検討しながら事業運営をしていくことが大切です。

補助金返還の例

補助金交付額が上限の450万円の場合に、事業場内最低賃金の増加目標が未達の場合の事例を見てみましょう。事業年度ごとの未達に応じて、返還額は以下のようになります。
事業年度の1年度目で未達になった場合には、全額の450万円を返還しなくてはなりません。
事業年度の2年度目で未達になると、1年目は達成できているため、返還額は2/3となります。1年度目は達成しているので150万円は受け取れるものの、300万円の返還が必要です。
事業年度の3年度目で未達になると1年度目、2年度目は達成できているため、返還額は1/3です。1年度目、2年度目は達成できているため、2年度分にあたる300万円は返還の必要はありませんが、3年度目の未達分として150万円を返還しなくてはなりません。

まとめ

IT導入補助金の通常枠B類型では、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準といった賃金引上げ計画を定め、それを交付申請前に従業員に表明しなくてはなりません。さらに、IT導入補助金の交付によりITツールを導入した後、事業計画を実施する3年間に毎事業年度の目標をクリアすることが求められます。
天災で被災したなどの特別な事情がない限り、未達だった年度の割合に応じて、IT導入補助金の返還を求められることがあるので注意が必要です。

 

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この記事の監修

アクセルパートナーズ 代表取締役二宮圭吾

中小企業診断士
株式会社アクセルパートナーズ代表取締役 二宮圭吾

WEBマーケティング歴15年、リスティング・SEO・indeed等のWEBコンサルティング300社以上支援。
事業再構築補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金等、補助金採択実績300件超。
中小企業診断士向けの120名以上が参加する有料勉強会主催。

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