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【IT導入補助金】給与支給総額の増加が求められるケースがある?

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IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者がIT化やDX化を図ることを促進し、費用面でサポートしてくれる制度です。
ITツールの導入には資金が必要となるため、導入の障壁になっています。そのため、一定の割合を補助してくれるわけですが、ITツールを導入すれば簡単に交付されるわけではないので注意が必要です。IT導入補助金は、働き方改革や賃金引上げなどの国の政策目標とリンクしているところもあり、ITツールを活用することで生産性の向上や労働環境の改善、賃金アップなどの目標を達成しなくてはなりません。
この記事では、IT導入補助金の交付にあたって求められる給与支給総額の増加について解説していきます。

IT導入補助金で求められる要件で着目すべき点

IT導入補助金は、従業員が5人程度の小規模事業者や個人事業主をはじめ、建設業などの一定規模を誇る中小企業や医療法人、学校法人、特定非営利活動法人や社団法人、財団法人など幅広い事業者が対象となる補助金です。そのため、補助金が得られる機会に、なんでも良いから最新のシステムを導入しようなどと安易に考えてしまう事業者もいるかもしれません。
ですが、これはNGです。 申請にあたっては、IT導入補助金を利用して導入したITツールを活用することで、労働生産性の伸び率を1年後は3%以上、3年後は9%以上の実現可能かつ合理的な目標とした計画を作成することが求められ、これを実行しなくてはなりません。IT導入補助金はいくつか種類がありますが、通常枠B類型の場合には、以下の要件をすべて満たす3年の事業計画を策定して実行することも求められます。もし、事業計画で定めた目標を達成できないと、交付されたIT導入補助金の全額もしくは一部の返還を求められることがあるため、安易な申請は控えることをおすすめします。

通常枠B類型で求められる事業計画

通常枠B類型の申請をするには、事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させることと、事業場内で最も低い賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする計画を立てなくてはなりません。そのうえで、策定した賃金引上げ計画、従業員に表明することが求められます。 給与支給総額とは、非常勤職員も含めた全従業員と役員に支払った給与の総額のことです。給料、賃金、賞与と役員報酬などの給与に該当するものは含みますが、福利厚生費や法定福利費や退職金は含めません。
事業計画期間は3年間に及び年率平均となりますので、毎年度、前年度に比べて1.5%以上増加させていくことが求められます。

IT導入補助金の返還について

IT導入補助金で費用の一部補助を受けてITツールを導入したにもかかわらず、事業計画に定めた目標をクリアできなかったことで、後から返還を求められるとなると資金計画が狂い、資金繰りが大変になるおそれもあります。返還が求められるケースは以下のような場合です。
事務局へ期間内に報告をしなかった場合など、義務違反の場合は全額返還が求められます。賃上げ計画について従業員に表明したと申告しながら、実際には表明していないことが発覚した場合も全額返還しなくてはなりません。事業計画終了時点において、給与支給総額の年率平均1.5%以上の増加目標が達成できていない場合も、特別な事情などがない限り、補助金の全部の返還を求めることがあります。
給与支給総額の年率平均1.5%以上の増加目標が未達かどうかは、事業計画終了時点である3年度目に判断されます。なお、給与支給総額の年率増加率平均が付加価値額の年率増加率平均/2を越えている場合や大規模地震や大規模水害など天災といった事業者の責めに帰さない事情により目標を達成できなかった場合はIT導入補助金の返還は求められません。
付加価値額は粗利益のことで、売上高から原価を控除して求めます。
給与支給総額を用いることが適切ではないと判断される特別な事情がある場合には、給与支給総額増加率に代えて、1人あたり賃金の増加率を用いることも認められます。
事業場内最低賃金の引上げ目標が達成できなかった場合は、どの年度が未達だったかによって全額返還か、一部返還かが決まるので注意が必要です。事業年度の1年度目で未達になった場合は、全額を返還しなくてはなりません。1年目は達成できたものの、2年度目が未達だった場合は、1年度目は達成しているので3分の1は受け取ることができ、残りの3分の2の額を返還しなくてはなりません。1年度目、2年度目は達成できたものの、3年度目で未達になると3分の2分は受け取れますが、3分の1は返還しなくてはなりません。なお、事業年度の3年度目に事業場内最低賃金の増加目標が未達となり、かつ給与支給総額の増加目標も未達である場合、いずれか返還額の高いほうの金額の返還が求められます。この点、事業場内最低賃金が1年度目、2年度目は達成できたものの、3年度目に未達の場合の返還額は3分の1です。
ですが、給与支給総額の年率平均1.5%以上の増加目標が達成できていない場合の返還額は全額です。そのため、事業場内最低賃金だけでなく、給与支給総額の目標もしっかりと達成していかないと、結局全額返還を求めることになるので注意しなくてはなりません。

返還せずにIT導入補助金を有効活用するには

IT導入補助金は、ただ書類を提出することや必要項目を埋めて申請すれば、簡単にもらえる補助金ではありません。
事前に求められる要件のほか、3年間の事業計画期間の間に定めた目標を達成できないと返還を求められることもあります。特に、通常枠B類型では給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させることと、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上といった具体的な政策目標も示されているので、申請をするにあたっては慎重に検討するのをおすすめします。
返還を求められないようにIT導入補助金を有効活用するにはどうすれば良いのか、以下で検討していきましょう。

自社の課題を明確にして検討する

IT導入補助金の通常枠は、それぞれの事業者が自社における課題を見出し、その解決につながるITツールを導入することで、業務効率化や売上アップを目指す枠です。そのため、自社が抱えている課題を棚卸して明確化することが求められます。特に給与支給総額や事業場内最低賃金の引上げを阻んでいる要因はなんなのか検討することが必要です。
業務効率が悪い、生産性が低い、人を雇い過ぎている、逆に人手が足りない、適材適所に配置されていないといった要因が考えられるかもしれません。それを解決するには、どんなITツールを導入すれば解決できるのか、よく検討することが必要です。

現状の把握と職場の一体化

給与支給総額や事業場内最低賃金の引上げ目標を掲げるには、現状の数値をしっかり把握して分析することも求められます。自社の状況が明確化できるとともに、従業員に賃金引上げ計画について事前に表明することで、監視の目が働くとともに、ITツールを活用して目標達成を目指そうという一体感が生まれます。

まとめ

IT導入補助金の通常枠B類型の申請をするにあたっては、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させることと、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にするという賃金引上げ計画を策定し、従業員に対して表明しなくてはなりません。給与支給総額の増加目標を達成できないと、IT導入補助金の返還が求められるので、申請前からしっかりと検討のうえ、導入後は目標達成に向けて従業員と一体化してITツールを有効活用しながら、経営努力を重ねることが大切です。

 

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この記事の監修

アクセルパートナーズ 代表取締役二宮圭吾

中小企業診断士
株式会社アクセルパートナーズ代表取締役 二宮圭吾

WEBマーケティング歴15年、リスティング・SEO・indeed等のWEBコンサルティング300社以上支援。
事業再構築補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金等、補助金採択実績300件超。
中小企業診断士向けの120名以上が参加する有料勉強会主催。

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