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【要確認】重要物資サプライチェーン強靱化支援事業とは?(クラウドプログラム編)

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経済産業省より令和5年度補正予算事業概況が発表されています。今回のコラムのテーマとしている領域である「成長力の強化・高度化に資する国内投資を促進する」項に関しては、経済環境変化に応じた重要物資サプライチェーン強靭化支援が挙げられており、総額9,147億円の予算が設定されております。その中でクラウドプログラムについての分野は1,166億円の予算が割り当てされています。 

本コラムでは「クラウドプログラム」の分野について概要とポイントを確認していきたいと思います。

政府から開示されている資料を確認するだけではなかなか聞きなれない法律や言葉が多数現れてきますので、言葉の意味やなぜそのような設定がされているか?といった意図を確認しながらポイントを整理していきたいと思います。 

本支援事業活用を検討予定の方は制度の理解に向けて、是非本記事を参考いただけますと幸いです。 

 

サプライチェーン強靭化支援事業(クラウドプログラム)の概要 

 

最初に、本事業の目的と事業概要、成果目標についてポイントを確認していきたいと思います。クラウドプログラムの領域に関しては商務情報政策局 情報産業課 ソフトウェア・情報サービス戦略室により下記で定義されています。 

 

事業目的

供給途絶が国民の生存や国民生活・経済活動に甚大な影響を及ぼす重要な物資に関し、安定供給に資する事業環境の整備に向けて、民間事業者等に対する支援を通じて供給確保を図る  

 

事業概要

厳しさを増す地政学的環境変化および破壊的な技術革新に対応するため、クラウドプログラムについて、生産基盤の整備、供給源の多様化、生産技術の導入・開発・改良、代替物資の開発等の安定供給を図るための取り組みに対し、必要な支援を行う。 

 

成果目標

厳しさを増す地政学的環境変化及び破壊的な技術革新に対応するため、クラウドプログラムのサプライチェーンの強靭化を図る。基盤クラウドプログラムの安定供給を確保し、2027年度までに国内に事業基盤を有する事業者が基盤クラウドを持続的に提供できるような体制を構築する。 

事業スキームとしては下記のような体制で審査、補助を行っていく形になります。実際はNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が民間企業との対応窓口を行っていく体制になります。 

出典:・令和5年度補正予算案の事業概要(PR資料) 

 

クラウドプログラム安定供給確保計画申請について 

実際に支援を受けるためには所定の手順にのっとった計画の作成、提出が必要になってきます。 

 

指針として、20231月「インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて電子計算機(入出力装置を含む。)を他人の情報処理の用に供するシステムに用いるプログラムに係る安定供給確保を図るための取組方針」が経済産業省より公表されています。 

実際の認定に関するフローは下記の図をご参考ください。申請にあたっては、まずは、供給確保計画を作成し経済産業省 商務情報政策局 情報産業課 ソフトウェア・情報サービス戦略室へ提出する形になります。そのうえで計画の審査を受け、認定を受ける流れです。助成金の交付に当たってはNEDOが窓口となって実施します。 

出典:経済産業省ホームページ:クラウドプログラムの安定供給の確保 

 

クラウドプログラムを取り巻く重要性について 

ここで、なぜクラウドプログラムがそこまで重要視されているのか?という点について、解説したいと思います。

上記で挙げた「インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて電子計算機(入出力装置を含む。)を他人の情報処理の用に供するシステムに用いるプログラムに係る安定供給確保を図るための取組方針」にその根拠となる記述がございますので、一つずつ政府が重視している背景のポイントを確認できればと思います。この点については取組方針の第1章にて背景の説明が記載されています。 

出典:令和5119日 経済産業省:インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて電子計算機(入出力装置を含む。)を他人の情報処理の用に供するシステムに用いるプログラムに係る安定供給確保を図るための取組方針 

 

(1)重要性の観点 

最初は重要性の観点です。ここで挙げられている政府の観点を確認してみましょう。 

大きくは2点の記載があります。 

 

1点目は、クラウドプログラムの国民生活、産業活動上での重要性が挙げられています。SNSや検索をはじめとする国民生活に根差したサービス、メールやオンライン会議等の産業活動を支えるサービスに、クラウドプログラムが用いられており、特に基盤的なクラウドサービスはあらゆる国民生活・産業活動にとって不可欠なものである点と、社会におけるサイバーセキュリティの重要性が高まる中、クラウドサービスにも高度なセキュリティが求められています。その確保のためにも基盤クラウドプログラムが不可欠であるという観点です。 

2点目として、クラウドサービス市場は成長傾向である点です。重要な情報を扱う金融や医療、規制インフラ業種においても基盤クラウドの利用が進んでおり、基盤クラウドの安定供給の必要性が今後ますます増加していく点があります。 

 

上記の観点で、必要な基盤クラウドプログラムが供給できなくなれば、広く国民生活又は経済活動に大きな影響があり、その機能を代替することが困難であるリスクに対応していく必要があるとの記載です。 

 

(2)外部依存性の観点 

2点目は外部依存性の観点です。引用している取組指針内でもかなりページを割いた記述になっていますが、端的にポイントを整理すると大きく3点にまとめられます。  

 

1に「供給先の動向及び供給途絶の影響に関する認識」があります。 

基盤クラウドプログラムの供給を外部に依存しており、国内には世界で高い競争力を有する組織・人材がとどまりづらい状況にあり、国内の優秀な人材が、世界シェア上位の企業へ就職するために、海外に流出する事例も出てきている点が挙げられています。 

 

2は「将来の重要性及び成長性」です。クラウドサービス市場は成長傾向であるほか、DXトレンドにより、重要情報を扱う業種においてもクラウドサービスの利用が進んでいる状態である点と、今後日本が更なる大量・高速処理のニーズに対応できる基盤クラウドプログラムを開発・提供できない場合、知見を有する組織・人材が日本から喪失し、あらゆる領域において、将来の情報処理を他国に依存するおそれがある点の指摘があります。 

 

3は「日本及び諸外国・地域の政府及び民間の動向」についてです。 

日本では、政府情報システムはクラウドサービスの利用を第一候補として、その検討を行うものとされており、政府情報システムの調達については、クラウドサービスを原則とする動きが進んでいる点と、海外の動きとして、欧州連合(EU)は、欧州データ戦略(2020 2月)等を通じ、欧州のデータ主権の保護を重視した欧州独自のクラウドを構築する民間主導の取組を支援している状況が例として挙げられています。 

 

また、事業者別の世界市場におけるシェアについても言及がございます。事業者としては米国3社、中国1社の4社のみで市場の約7割を占めている点にも触れられており、シェアが上位の事業者と投資額の差が生じ、競争力の差がさらに拡大していくという想定があります。

こういった状況で、クラウドサービス自体、外部に過度に依存する状況にあり、供給断絶が生じた場合は、生活・経済活動に甚大な影響が生じ得る状態にあるとの懸念を示されています。 

 

(3)外部から行われる行為による供給途絶等の蓋然性 

クラウドサービスの戦略的な重要性が高まっている中で、日本は、そうしたプログラムの供給を多く海外に依存しています。

それにより、国内に事業基盤を有する事業者が基盤クラウド事業から撤退を余儀なくされた場合、海外の事業者による基盤クラウドの停止等が発生した際には、利用者の事業そのものが停止する可能性があるといったリスクが記載されています。 

 

(4)法による施策の必要性 

クラウド利用者の事業停止などの事態を防ぐためにも、特に行政・重要インフラ分野の重要なデータを自律的に管理可能な産業基盤を早急に国内に確保する必要がある点が述べられています。 

 

(5)サプライチェーンの構造 

クラウドサービスのシステムは、大きく分けて、ソフトウェア(クラウドプログラム)、ハードウェア、及びデータセンター等によって構成されている点と、システムごとに構造・構成が異なる点が言及されています。

特に基盤クラウドプログラムは、ハードウェア、データセンター等を制御するものであり、根幹を支えるものであるクラウドプログラム及び電子計算機がサプライチェーン上重要であることが示されています。 

 

(6)クラウドプログラムのサプライチェーンが抱える課題及び動向 

 

この観点については、大きく分けて3点が記載されています。 

 

1点目は「社会的ニーズ」です。基盤クラウドプログラムの国内開発体制を確保できなければ、自律的に管理すべき重要データを扱う情報システムを他国に依存するおそれがありえる為、基盤クラウドプログラムの開発とその開発環境を整備し、競争力を有する必要性がある点です。 

 

2点目は 「基盤的技術の獲得必要性」です。 

今後、大量・高速な情報処理需要に対応できる基盤クラウドを実現するためには、高度な電子計算機を基盤クラウドにおいて活用する必要があります。世界に先駆けて技術開発を進める為、スタートアップ等の小規模な事業者でも利用できるように、高度な電子計算機の利用機会を拡大していく必要性が挙げられています。 

 

3点目は「需要動向を捉えた技術革新の重要性」です。 

クラウドサービスを将来に亘って安定的に供給するためには、クラウドプログラムや電子計算機、データセンター等のサプライチェーンの確保を含め、利用者目線で技術の高度化を図るエコシステムを創出することが挙げられています。現在外国のベンダーがこの観点でシェアを獲得していますが、日本もこの点を意識した活動の必要性があるという記載です。 

 

まとめ 

いかがでしたでしょうか。今回は、経済環境変化に応じた重要物資サプライチェーン強靭化支援事業(クラウドプログラム)について、重要ポイントと思われる背景について解説しました。支援事業の申請をする場合、政府が定めている実施事業の背景や目的を明確におさえて理解しておくことが非常に重要となります。 

背景を押さえた上で、政府から発行される公募要領や事業概要をご確認頂けると実際に申請される際の理解が深まると思います。こういった点を念頭において, 

必要に応じて専門家の支援を受けることも選択肢としてご検討ください。

 

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この記事の監修

アクセルパートナーズ 代表取締役二宮圭吾

中小企業診断士
株式会社アクセルパートナーズ代表取締役 二宮圭吾

WEBマーケティング歴15年、リスティング・SEO・indeed等のWEBコンサルティング300社以上支援。
事業再構築補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金等、補助金採択実績300件超。
中小企業診断士向けの120名以上が参加する有料勉強会主催。

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