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【ものづくり補助金】賃上げ要件とは?基本要件について解説

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中小企業が機械装置類を導入したりシステム構築を行ったりしたい時に利用できる「ものづくり・商業・サービス補助金」(以下「ものづくり補助金」)。経費の1/2もしくは2/3を最大2,250万円まで(グリーン枠は最大5,000万円、グローバル市場開拓枠は最大4,000万円まで)補助してもらうことのできる、人気の高い補助金です。

ものづくり補助金には、以下の3つの基本要件を満たす3~5年の事業計画の策定が必要です。

①事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加

②給与支給総額を年率平均1.5%以上増加

③事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする

基本要件はすべての申請者が必ず満たさなければならない要件で、申請要件が未達の場合は、補助金の全額または一部の返還が求められるという規定もあります。

今回は、3つの基本要件の内、賃上げ要件である「給与支給総額を年率平均1.5%以上増加」、「事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする」について解説します。

 

「給与支給総額を年率平均1.5%以上増加」という要件

「給与支給総額」には何が含まれるか

「給与支給総額」には、非常勤を含む全従業員および役員に支払った給与等が含まれます。「給与」とは、給料、賃金、賞与、役員報酬、各種手当が含まれますが、福利厚生費や、退職手当等の給与所得とされないものは含まれません。

個人事業主の場合の給与支給総額は、給料賃金・専従者給与・青色申告特別控除前の所得金額の合計額となります。

【法人の場合】

含まれるもの

・給料

・賃金

・賞与

・役員報酬

・各種手当(残業手当、休日出勤手当、職務手当、地域手当、住宅手当等の給与所得とされるもの)

含まれないもの

・福利厚生費

・給与所得とされないもの(退職手当など)

【個人事業主(青色申告)の場合】

給与支給総額=給料賃金+専従者給与+青色申告特別控除前の所得金額(⑳+㊳+㊸)

年率1.5%以上増加とは

では、この給与支給総額を「年率平均1.5%以上増加」とは、具体的にどのような状態なのでしょうか。下記の例を基に解説します。

【例】A社

・従業員数:5名

・従業員の年収:480万円

・直近の販売費及び一般管理費の計算内訳

従業員給料

2,000万円

役員報酬

600万円

従業員賞与

400万円

この場合、給与支給総額は2,000万円+600万円+400万円=3,000万円です。

この3,000万円を毎年1.5%以上増加させるということは、1年あたりの増加額は最低でも3,000万円×1.5%=45万円という計算になります。

事業期間が5年間の場合、ものづくり補助金の申請画面に入力する際は、下記の通りになります。

(単位:円)

 

基準年度

1年後

2年後

3年後

4年後

5年後

給与支給総額

30,000,000

30,450,000

30,900,000

31,350,000

31,800,000

32,250,000

伸び率

 

1.5%

3.0%

4.5%

6.0%

7.5%

伸び率は、基準年度からの伸び率を計算します。年率1.5%増加させると、5年後の伸び率は1.5%×5年=7.5%となります。

「事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする」という要件

「事業場内最低賃金」とは、補助事業実施場所で働く従業員に適用する時給額のうち最も低い額

「事業場内」とは、応募申請書に記載した補助事業の実施場所を指します。補助事業の実施場所で働く従業員のうち、時給換算した時に最も低い額で働いている従業員の賃金が「事業場内最低賃金」となります。

 

【例】B社

・東京都と大阪府に事務所がある

・補助金申請を行う事業の実施場所は、東京都内の事務所

・従業員4名の時給:

従業員

勤務地

時給

Cさん

東京都

1,130円

Dさん

東京都

1,100円

Eさん

大阪府

1,100円

Fさん

大阪府

1,080円

 

B社全体で考えた時の最低賃金で働く従業員はFさんですが、補助事業実施場所が東京都にある事務所のため、事業場内最低賃金で働く従業員はDさんになります。

 

地域別最低賃金の調べ方

「地域別最低賃金」とは、補助事業実施場所が所在している都道府県に適用されている最低賃金のことです。

「地域別最低賃金」は、厚生労働省のホームページで確認することができます。

厚生労働省HP 地域別最低賃金の全国一覧

 

または、ものづくり補助金総合サイトの公募要領のページで、「様式2 賃上げ計画の誓約書(14次・15次・16次締切用)」というExcelファイルでも確認することができます。

まず、2枚目のシートである「様式2‐1」の「ものづくり補助金 賃金引上げ計画の誓約書作成ファイル」を開きます。「①補助事業実施場所の都道府県を選択してください」という項目の「選択してください」と書いてあるセルのプルダウンより、補助事業実施場所の都道府県を選択すると、すぐ下のセルに、事業場内最低賃金が自動表示されるようになっています。

ちなみにこの「賃金引上げ計画の誓約書作成ファイル」は、申請時にPDF化して添付するのではなく、内容を電子システムへ直接入力する仕様になっているため、実際には使用しません。しかし、賃金引上げ計画の内容の確認にもなりますので、一度は記入してみることをお勧めします。

地域別最低賃金+30円の考え方

それでは、地域別最低賃金+30円の考え方は、具体的にはどのような状態を指すのでしょうか。

例えば、東京都の地域別最低賃金は、2023年8月現在1,072円です。ものづくり補助金の基本要件「事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする」を満たすためには、補助事業実施場所で働く従業員の時給を、1,072円+30円=1,102円以上にすることが必要です。

先ほどのB社の例では、事業場内最低賃金で働く従業員にあたるDさんの時給は1,100円でした。「地域別最低沈金+30円以上の水準」を満たしていませんので、応募申請時から翌3月末までに2円以上の賃上げをしなければなりません。

また、地域別最低賃金が引き上げになった場合は、事業計画期間中の3月末時点において、改訂後の最低賃金+30円以上の水準を維持するために、さらに賃上げが必要になります。

出展:ものづくり補助金ホームページ よくあるご質問

例えば、先ほどの例のB社において、Dさんの時給を応募申請後に1,120円まで上げたとします。その後、事業計画期間中に、東京都の最低賃金が現行の1,072円から1,102円に改訂されたとします。その場合、改訂後の翌年3月末までに事業場内最低賃金を1,132円以上にしなければなりませんので、Dさんの賃上げはもちろんのこと、時給1,130円であるCさんの時給も引き上げることになります。

応募申請時に「地域別最低賃金+30円以上の水準」をクリアしていれば賃上げの必要はない

もし、事業場内最低賃金がもともと地域別最低賃金+30円以上である場合は、既に基本要件を満たしているため、賃上げする必要はありません。ただし、事業計画期間中に地域別最低賃金が改訂された場合は、改訂後の条件が水準を満たしているかどうか必ず確認しましょう。

 

基本要件未達の場合の補助金返還義務

ものづくり補助金申請時点で、申請要件を満たす賃金引上計画を策定していることが必要です。補助金交付後に、賃金引き上げ計画を策定していないことが発覚した場合は、補助金額全部または一部の返還が求められます。

給与支給総額の増加額が未達の場合

補助事業を完了した事業年度の翌年度以降、事業計画終了時点において、「給与支給総額を年率平均1.5%以上増加」要件が未達の場合、導入した設備等の簿価または時価のいずれか低い方の額のうち補助金に対応する分(残存簿価等×補助金額/実際の購入金額)の返還が求められます。

事業場内最低賃金の増加目標が未達の場合

補助事業を完了した事業年度の翌年度以降、事業計画期間中の毎年3月末時点において、事業場内最低賃金の増加目標が未達の場合は、補助金額を事業計画年数で除した額の返還が求められます。

 

まとめ

今回は、ものづくり補助金の賃上げに関する基本要件について解説しました。

「給与支給総額を年率平均1.5%以上増加」は、給料、賃金、賞与、役員報酬、各種手当の合計額から計算し、その1.5%が毎年増加可能かどうかを検討します。

「事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする」は、補助事業の実施場所と、そこで働く従業員の最低賃金とおよび地域別最低賃金を調べて判断します。

まずは自社の給与支給総額や最低賃金を計算して、賃上げ計画の策定が可能かどうかを考えてみましょう。

また、もしこの基本要件よりも高い水準で賃上げが可能であれば、加点や補助上限額の引上特例を狙える可能性もあります。

要件をしっかりと確認したら、ぜひともものづくり補助金の申請に挑戦して自社の経営革新に役立てましょう!

 

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この記事の監修

アクセルパートナーズ 代表取締役二宮圭吾

中小企業診断士
株式会社アクセルパートナーズ代表取締役 二宮圭吾

WEBマーケティング歴15年、リスティング・SEO・indeed等のWEBコンサルティング300社以上支援。
事業再構築補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金等、補助金採択実績300件超。
中小企業診断士向けの120名以上が参加する有料勉強会主催。

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