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終身雇用や年功序列の崩壊元年!その時、中小企業はどう動く?【2020年】

  • 2020年02月03日
  • 著者admin

令和が始まってすぐの5月、経済界の大御所による『終身雇用を守っていくのが厳しくなってきている』という発言をうけ、終身雇用や年功序列の終焉がまことしやかにささやかれています。

その発言に呼応するように、大手企業による早期退職者募集のニュースが続いていますが、驚くことに、業績好調な企業もリストラや早期退職募集を打ち出しています。

日本型雇用の代名詞でもある、終身雇用や年功序列は本当に終わってしまうのでしょうか?

 

そんな時代に、中小企業は何を考えて動けばいいのか、というところにスポットを当てて考えてみました。

 

従業員

1.発言の真意は?

まずは、発言内容のおさらいをしたいと思います。

経団連 中西会長 の発言

「高品質なものを作って世界に売る、というビジネスモデルであった高度経済成長期には、一括採用から徒弟制度で鍛えるという人材育成は効率的であった。しかし、ビジネスモデルそのものが変わり、日本は知恵(intelligence)で勝負しなければいけない時代になった。これからは、やる気のある人達が集まって成功体験を重ねていくという育成方法に変わっていかざるを得ない。自分に何ができるのかを宣言して、自分のキャリアを自分で設計しないと給料はあがらない。」また、「給料を決めるのは会社ではなく、マーケットが決める時代だ。」といった事をおっしゃられています。

トヨタ自動車 豊田社長の発言

2019年5月に行われた、日本自動車工業会の会見の中で「終身雇用を守っていくというのは難しい局面に入ってきた。終身雇用を守るインセンティブが企業側にあまりない。」とお話されています。しかし、同年の春闘の中では「会社は従業員の幸せを願い、組合は会社の発展を願う。そのためにも、従業員の雇用を何よりも大切に考え、労使で守り抜いていく。」という発言もされています。

想像するに、このお二方の真意には違いがありながら、このまま終身雇用を維持していくのは難しいというところでは一致しているんじゃないかと思います。豊田社長の真意はどちらかというと、「終身雇用を守りたい、だから従業員の皆は何とか頑張ってくれ」という激励の意味が込められている様に感じました。そして国に対しても何らかの対応を求めているような・・・。

 

2.企業がこれまで終身雇用を続けてきた理由

これまで大企業では当たり前の様に守られてきた終身雇用、これがなぜ急に維持することができないと言われているのでしょうか?

これは、中西会長のおっしゃられた内容の通りで、ビジネスモデルが変わってしまったことで企業に求められる人材が変わった、という事だと思います。高度経済成長期は、『高品質なものを作れば売れた』という時代でした。真面目に決まった事を実直にこなしてくれる人ほど経験曲線効果※1が大きくなり、収益性を高めてくれる人材と位置付けられていました。だから企業は終身雇用を約束し、年功序列を推し進めて、長期にわたり会社に忠誠を誓ってくれる人材を育成してきました。

しかしながら、現在はインターネットの発達により情報が氾濫し、価値観が多様化する中でPLC(製品ライフサイクル)が非常に短くなってきています。つまり、新しい価値を次々と生み出さなければ早々に淘汰される世の中になってきているのです。こういった時代では、新しい技術や知識を自ら学び、自由な発想を生み出す社員が重宝される割合が高まっていきます。

※1経験曲線効果

経験値が増えてノウハウが蓄積されることにより、製品一つあたりの費用が下がる事

下図の通り、累積生産量が増えていくほど、単位あたりのコストが逓減するという理論

経験曲線効果

3.今後の展望

さて、こんな時代の背景を踏まえて、実際に日本の雇用はどのように変わっていくのでしょうか?まずは構造面から考えていきます。

 

a.構造面

企業における組織は、ほぼ全てがピラミッド型になっています。言われるまでもなく、上に行けば行くほど間口は狭く、そこに向かって出世レースが進んでいくわけですが…。

役職階層

実際にピラミッドの頂点にたどり着ける人はほんの一握りでしかなく、その一握り以外の人の中にはモチベーションを保つのが難しくなっている方もいるかもしれません。

経営としては

・経営環境の変化やビジネスモデルの転換により、やる気に溢れていて、新しい技術や知識を持った人材を登用していきたい

・中高年層への高い給料支払いで、思うように資源配分ができない

・全員を新卒一括採用からゆっくりと育てていく余裕がない

こういったところが問題だと捉えた企業は、次々に課題解決に乗りだしました。人への投資効果を考えた場合、年功ではなく力・やる気のある人にしっかり配分する、といった舵を切りたいということだと思います。

 

b.各企業の課題解決策

大手企業が課題解決に乗り出した結果、早期退職者の募集が加速しました。

2019年から2020年初頭にかけて報道された早期退職者募集について、企業ごとの施策を一覧表にまとめましたのでご覧ください。

早期退職一覧

上記以外にも2019年には沢山の早期・希望退職者の募集は行われ、過去5年で最多を更新しています。35歳以上や40歳以上からも対象になるなど、比較的に若い世代からも募集されているのが驚きです。上のピラミッドで言うと、40歳で管理職就任というコースに乗れなかった人が対象なのかもしれません。朝日新聞の早期退職者募集では、退職金が最大で6,000万円と報道されて大変な注目を集めていましたね。

人手不足って話はいったいどこに・・・?

 

c.制度の面からみた終身雇用と年功序列

続いて、制度面からみた終身雇用や年功序列について考えていきましょう。

日本の雇用契約では、正社員には期間の定めのない労働契約が結ばれます。終身雇用を定める法律はありませんが、雇用権乱用法理にみられる通り、よほどのことがないと企業は人を解雇をすることができません。

このあたりが日本の終身雇用と言われる制度を大きく後押ししてきた要因でもあります。

契約

終身雇用を支えてきた職能資格制度

日本では、職能資格制度という賃金体系が一般的です。これは、会社の求める業務を遂行する能力に対して評価を行う制度です。能力は落ちることがないという考えに基づいて作られているため、会社に長く勤めるほど、給料が高くなっていく仕組みになっています。

しかしながら、求められる能力は時代とともに変わります。勤続年数の長い人ほど会社が求める能力を発揮している、とは一概には言えない状態になってきています。限りある経営資源を効率的に投下したいと考える企業にとっては、年功序列よりも求める能力を持っている人材を中途で採用する方が効率的だと考えてもおかしくありません。

ちなみに、アメリカでは職務等級制度と言われるものが一般的で「この仕事ができる人に対してはこの給料です」といったことが明確になっています。なので、転職しても給料が下がりにくく、また会社にもたらす成果と報酬のバランスが大きく崩れることがありません。

ただし、同じ仕事でより給料の高い会社があればすぐに転職するといった事が起こりやすいなど、会社に対する忠誠心を高めることが難しい仕組みです。そんな中でもGoogleなどは、世界から称賛されるような素晴らしい取り組みでそこら辺もしっかりカバーしています。

年功序列について

上にも記載した通り、過去のビジネスモデルにおいては経験を重ねれば重ねるほど経費削減効果が見込めたことから、長期間に渡り在職してくれる社員が報われる仕組みが作られてきました。しかしながら現在は、年功が会社にもたらすメリットよりも、新しい知識や技術をもたらしてくれる人材の方が有用であると判断されつつあります。

今後は、職能資格制度の見直しと同様に、長く勤めることよりも、より求められる能力に近い人材が短期的に求められるといった時代になっていくかもしれません。

法整備が進んだとしたら、AIの進化も相まって人材の流動化が一気に加速しそうです。

 

d.今後の展望まとめ

新卒一括採用からゆっくりと全員を育てていく余裕がないと話のあった通り、昨年までの超売り手市場からは多少の変化があるかもしれません。

やる気、力のある中途人材の活用を積極的に行い、力や成果に応じた報酬に切り替えていくという話もありました。人材の流動化が加速し、短期プロジェクトチームの様な働き方に変わっていく事も考えられます。こうなった場合、求められる力に年齢は関係なく、若い人でも高い報酬を得られる可能性が高まります。成果に応じた報酬が効果的に配分されれば、経済の活性化が大いに期待できます。

よって、終身雇用や年功序列といった仕組みは近いうちに見直されていくことでしょう。

しかしながら、日本はバブル崩壊後に「今までの日本式経営が悪かったんだ」といった声が高まり、欧米型の成果主義を取り入れました。結果は皆さんご存知の通り、失敗に終わっています。

経営の神様と呼ばれた松下幸之助氏が世界恐慌の時に「生産は即日半減するが従業員は一人も減らさない」と宣言したことは有名です。豊田社長も従業員の雇用を何よりも大事に考え、労使で守り抜いていくと宣言しています。

なんとか経営の力で雇用を守り、かつ日本経済の再建を果たして欲しいと願っています。

 

4.中小企業の進むべき道

さて、早期退職者募集企業の一覧にある通り、近年は35歳以上が対象となるなど、中堅どころかまだ若手に属していてもおかしくない層からも早期退職者が出ています。これは中小企業にとってはチャンスだと思いませんか?

早期退職に応じたとはいえ、大手企業に採用されて働いてきた人材です。おそらくほとんどの人が、もともと持っている能力が高く、大手企業のノウハウもしっかりもっているはずです。

そこで中小企業診断士として、中小企業経営者の皆様に2つご提案いたします!

 

1つ目 中途社員の積極採用

大手企業ですら、新卒一括採用からのんびり育てている暇はない、と言っている時代です。人材の流動化は加速し、少し長い目で見れば短期プロジェクトチームのような働き方も一般的になるかもしれません。

ここで若手や新卒にこだわる必要は全く無いと思います。少し先の未来も予想しにくい時代に、中堅や年長者を雇用することは、リソースを十分に持てない中小企業にとってうってつけの人材活用ではないでしょうか?もともとの能力や大手企業のノウハウを持った人材を登用するべく、中途採用を大いに活用しましょう!

Indeedの登場により、採用コストはどんどん下がっています。ちょっと知識があれば、お金をほとんどかけずに採用することも可能です!

2つ目 受入態勢の構築

中途人材にちゃんと腰を据えてもらって、しっかり成果を出してもらうためには、会社の制度もバッチリ整えなければなりません。

早期退職に応じてきた方々は一時的にモチベーションが下がっているかもしれません。しかし、中小企業ならではの出来ることは沢山あります。むしろ中小企業経営者である皆さんにしか出来ないことばかりと言えるかもしれません。

大企業が諦めて手放した人材を、自社でしっかりと宝物に育てあげて業績アップに繋げていきたいところです。大きな裁量を渡して、しっかり頑張りに報いて、もともと持っている能力を存分に発揮してもらいましょう!

 

5.終身雇用崩壊に対して思うこと

この30年間、日本の経済は成長しておらず、ついには失われた30年と呼ばれるに至りました。私自身、今の経済状況で終身雇用や年功序列を維持していくのは難しいのではないかと思っています。しかしながら私には、その責任が早期退職募集の対象になる方々だけにあるとは思えません

この状況を打開したいですね。

高齢化社会を迎えた日本では、70歳までの雇用延長が努力義務となりそうな情勢です。大手企業はそれに対して、早めに手を打ってきたといったところでしょうか。国と企業の温度差が大きいです。

すぐ先の未来も想像する事が難しい現在、人材に対する考え方を見直す、あるいは再確認する必要に迫られているかと思います。長い目でみれば、いずれはAIの進化によって人間の仕事はほとんどなくなるかもしれませんが…。

そんな遠い先の話をしていても仕方がないので、中小企業経営者の皆様、サラリーマンの皆様、いまやれることをしっかりやって近い将来に備えましょう!