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社員数や組織の成熟度に合わせた経営者の仕事内容と社員への任せ方

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経営者としての仕事は、一定ではありません。
組織の規模や成熟度、社員数に合わせて取り組む課題や仕事内容も変えていくことが理想的です。
初期の経営では、経営者自身が直接お客様と向き合うことが多いものです。

しかし、組織が大きくなるにつれて、経営者は徐々にお客様から一歩引き、社内コミュニケーションを深め、チームビルディングに焦点を当てる時期が訪れます。
そして、その先には事業継承という大きな課題を迎えることになります。
このように、経営の時期ごとに経営者の仕事が変わっていく中で、社内の部門をしっかりと構築し、社員への業務の移行を進めることが重要となります。
この結果、経営者が直接手を下さなくても、業務が円滑に進む環境を築くことができます。
今回は、この変化していく経営者の仕事と社員への任せ方について、各時期の特徴とその対応策を詳しく解説していきます。

第一期:実務と並行しつつ早期人材育成と売上拡大を狙う

ビジネスを始めたばかりの経営初期は、社内人数が不足していることから、大抵の実務は自分の手で、もしくは少数のパートナーと取り組むことが多いです。
この厳しい時期は、会社の基盤となる土台を築くための大切なステップとなります。
更に、経営の成長を見据えるならば、売上拡大が避けては通れない課題となります。
そのためには、継続的な顧客獲得が不可欠で、これを実現するためには、会社全体の営業力の向上が必要となるのです。

そして採用を行った際は、営業やサービスの強化、そして新入社員の教育という3つの要因が同時に必要とされる局面に直面します。
そこでは経営者としてのリーダーシップの発揮が求められ、自分がやっている仕事をゆくゆくは引き継げるような社員を育てていくためにも、 新たに加わった社員と肩を並べて実務に当たり、お客様との接点を共有する中で、経営者の考え方、仕事への姿勢、そして会社の将来ビジョンを伝えていきます。
そのため、早い段階で自分の役割を果たせる人物をアシスタントとして選任しておくことが賢明です。
ここで注意しておきたいことは、クリエイティブな業務は主担当として社員に担ってもらうことが大切です。
なぜなら社員を補助者のポジションにしてしまうと、経営者自身が直接対応するお客様だけが増え続け、その結果社員の教育や育成に必要な時間を十分に確保できなくなるからです。
経営者として、会社全体が継続的な成長を目指す中で、社員の役割と成長をバランスよく管理していくことが、組織の持続的な成功への鍵となります。

第二期:主担当アサインと世代間教育により、リーダー候補者を検討する

会社が一定の成長を遂げ、社員数が5人を超えて、売上も順調に伸びるようになったとき、この段階で最も重要となるのは、実務の主担当を社員に移行していくことです。
しかし、ここで注意しておきたいことは、社員に業務を任せることが増えると、今までのお客様との信頼関係が希薄になるリスクが潜んでいます。
創業間もない頃は、実務から完全に手を引くのではなく、プレイヤーとしてお客様の状況を把握し、主要部分は社員に委ねるというバランス感覚が求められます。

そして、組織の持続的な成長には、次世代への教育が欠かせません。 特に、第2世代の社員を迎えるタイミングで、第1世代の社員が中心となり教育を担うことが理想的です。
初期の段階で、経営者が第1世代の社員に対して丁寧な指導と教育を行っていれば、その姿勢を受けつぎ、第2世代の社員にも同じような教育を行うようになります。
そのためにも、採用を行う際、重視すべきポイントは「人柄で採用をすること」です。
技術や経験はもちろん大切ですが、人間関係が優れた組織を目指すことに必要なのは、社員の人柄やその人の持つ価値観です。
また、未熟な社員同士が教育することを念頭に置き、会社の規模も小さいため社員に任せきりにせず、経営者自身が積極的にコミュニケーションを図り、技術面もチェックし、品質担保は経営者が行いましょう。
そして、実務の移行や世代間の教育を進めた後、リーダー候補者を検討していく段階に入ります。

第三期:自走可能な組織づくりと規模に応じたリーダー構成

従業員数が11人を超える時期には、組織の基盤作りが始まり、間接部門の確立やリーダーの構成が必要となる時期です。さらに、チームが自律的に動き、結果を出せる体制が求められます。
この段階で経営者は、徐々に実務から手を引き、経営の方向性や戦略に注力することが望まれます。タスクをこなさず、戦略的な視点を見据えつつも、組織の健全な成長を見守る役割を担うようにしましょう。

また、売上管理や中長期のビジョンなどの事業管理ができ、トラブル対応や、予期せぬ状況に迅速かつ適切に対応できる社員がこのタイミングで一人二人いると、事業の安定性や成長速度が大きく向上します。
経営者も社員の様子をよく見て、社員への適切なサポートやフィードバックを提供しましょう。

リーダーに求める3つのマネジメント

リーダーには、高い実力とともに、3つの主要なマネジメント能力が求められます。それは、タスクマネジメント、人材マネジメント、そして事業マネジメントです。

タスクマネジメント:タスクの進捗状況を適切に管理する手法のことです。

人材マネジメント:戦略的な人材配置や個人の能力の最大化、組織内人材の効果的な活用です。

事業マネジメント:事業の目的と目標を達成するための戦略の策定や実行、内部のリソースやプロセスの最適化に取り組むこと、経営資源の活用です。

現段階において、リーダーに求める理想的なリーダーシップは、タスクマネジメントと人材マネジメントのスキルをしっかりと持ち、これらを踏まえて実行できる状態であることです。

社員数における適切なリーダーの数

この段階では、最低でも3名のリーダーが必要です。
1名のリーダーに依存すると、業務量が過多となり、そのリーダーの将来的な退職の可能性、さらには独立の可能性など、組織の安定性にとって様々なリスクが考えられます。
そこで、リスクを適切に管理し、組織の成長をサポートするためには、複数のリーダーを育成し、一人一人の能力やスキルを最大限に活用することが大切です。
以下のようにリーダーの数を増やしていくことで、組織の安定性を確保することができます。

目安の人数

・社員数10名:リーダー2名

・社員数15名:リーダー3名

・社員数20名:リーダー4名

また、組織が10名以上の規模になると、採用戦略と離職防止が鍵となります。
この時点では、まだ規模の大きな組織ではないため、特に若手男性社員の採用に難しさを感じる企業も少なくありません。
このような状況を解消し、さらなる成長の基盤を築くためには、女性が働きやすい環境づくりを目指しましょう。
具体的には、柔軟な勤務体制、育児や介護のサポート、女性のキャリアアップの機会の提供など、女性が長期的に安心して働ける環境を整えることが大切です。
この働きかけにより、組織はさまざま人材を取り込み、安定性の強化につながります。

第四期:組織課題改善のための間接部門の設置と計画的な人材採用

社員数が20名を超えると、売上が伸びていく仕組みが出来上がる段階に入ります。
すると、以下のような問題点に直面することとなります。

・組織内の自主性や当事者意識の薄れ

・問題を起こす社員の増加とその対処

・人間関係の複雑化に伴うコミュニケーションの課題

・初期リーダー層の離職リスク

・経営者の熱意低下と、それに伴った組織全体のモチベーションの低下

・人件費の増加とコスト管理の危機化

・急激なマーケット変化への適応ができなくなる

「経営者が変わってしまった」という印象を社員に持たせないためにも、組織内の変化や課題にしっかりと目を向け、適切に対応していくことが求められます。
第一に考えるべき点は、直接の業務に集中しない間接部門をつくることです。

間接部門とは、人事や労務の調整、そして組織全体を繋ぐコミュニケーションの中心となる役割や、経営者のさらなる展望やビジョンを伝えるナンバー2の役割のことを指します。
先ほどお伝えしたように、成長期の会社では部門間やチーム間での分断や断絶が生じることがよくあるため、こういった対策が必要です。

そしてこの時期は、売上は順調に伸びているものの、人手が追いつかず採用に手間取るケースが目立ちます。この結果、一人あたりの粗利益が高くなりすぎないようにバランスをとり、しっかりと管理した上で計画的に採用することが大事になります。
ポイントとなるのが、計画的な採用戦略です。
募集から社員が一人前として活躍するまでのリードタイムを正しく見極め、タイミングをよく採用することが求められます。
例えば売上高の目標が120%であれば、社員人数を10%上げる必要があります。しかし実際には多くの会社ができず、社員が疲弊していく原因となってしまいます。
急成長するビジネスを支えるため、採用のタイミングは避けて通れない課題となります。

第五期:事業承継を見越した幹部候補の育成

社員数が30名を超えるこの時期には、採用人事の部門、財務の部門がそれぞれ必要になります。

しっかりとした資金調達と優秀な若手人材の採用をし、その中から将来の幹部候補を見据えて、継続的に教育・育成していくことが求められます。
企業によって異なるので一概には言えませんが、経営者が50歳を越えて事業承継の計画について考え始める時期になります。
後継者を育てるのには10年は必要とされており、その期間を見越して、引退する年齢から逆算し計画的に後継者の目星をつけて、その人間をしっかり教育していくことが求められます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
経営者自身が最前線でお客様に向き合い頑張る時期、実務から一歩引き、社内へのコミュニケーションが中心になる時期、徐々に教育やタスク管理から離れ、社員が成長していく時期を経て、社長のやるべき仕事が変わっていきます。
経営の各ステージに合わせて、経営者は自らの考え方を柔軟に変化させ、適切な仕事を社員に任せていくことが大切です。
これにより、組織全体の拡大と、発展を実現することができるでしょう。

この記事の監修

アクセルパートナーズ 代表取締役二宮圭吾

中小企業診断士
株式会社アクセルパートナーズ代表取締役 二宮圭吾

Webマーケティング歴15年、リスティング・SEO・indeed等のWebコンサルティング300社以上支援。
事業再構築補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金等、補助金採択実績300件超。
中小企業診断士向けの120名以上が参加する有料勉強会主催。

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