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自分で考える組織を作るために大切な”理由を伝える教育”について

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弊社ではとにかく理由を聞きまくる、理由をつけて指示したり教育する文化を大切にしています。

今日はそんな

「なぜ?」

についてちょっと考えてみたいと思います。

 

仕事は全ての行動に理由が必要

なぜ、

「”なぜ”をつけなければいけないのか?」
(ちょっとわかりづらいですよね。)

という点について経営者目線・社員目線の二つの目線で分けて整理したいと思います。

 

経営者目線で見る、「理由の必要性」

まず前提として、仕事をしている時間は常にタイムチャージが発生しています。

例えば、月給255,000円の人はボーナス・会社が負担する各種費用を入れると、おおよそ時給2,200円ほどかかります。

10分で366円ですので、三人で10分雑談したら1,000円くらいかかります。

そのため、全ての行動に理由が必要になるわけです。

簡単に例えれば行き先が特にないのに1,000円分タクシーに乗ったりしないし、タクシーの運転手さんが対して意味なく1,000円分遠回りしたルートを提案されても断りますよね。

ただ、観光地で運転手さんが

 

「このルートから見える紅葉がとても綺麗でちょっと遠回りして写真撮っていかれる人が多いんです。1,000円ほど余分にかかってしまいますがいかがでしょうか?」

 

という提案を受けて、行きたいと思った時に初めてお願いをすると思います。

この場合、

1,000円余分に払う理由:紅葉を見て写真取りたいから

という風に、理由を言われると動機づけが促され納得感を持って選択することができます。

 

タクシー運転手のように、全ての働く人にはタクシーのようなメーターがついていると認識することで適切なビジネスコミュニケーションをすることが可能になります。

 

社員目線で見る、「理由の必要性」

経営者目線で見る場合には”料金メーター”を意識することの大切さを書きましたが、社員目線で見る場合には、その人の後ろに”砂時計”を意識することが大切です。

簡単にいえば、その人の時間の有限性を考え1時間1時間かけがえがない時間であり、どんなにつまらない仕事をしている最中であっても残りどれだけの砂が残っているかわからない中で砂時計の砂は落ちていき1時間1時間残り時間が減っていきます。

そして、年とともに生活費が増えていきますので、年とともに自分の価値を高めて給料を増やしていきたいし、ある程度の年齢になると転職しづらくなっていくのでできる限り無駄な時間を過ごしたくないと優秀な人ほど考えます。

だからこそ、一つ一つの仕事に対して

「この指示されている仕事は会社に貢献できることなのか」

を前提に、できるだけ自分のキャリアにプラスになるような仕事をしたいと考えます。

「上司の命令は聞くのが当たり前」

と上司側は思うかもしれませんが、上司は一人とは限りません。

それが当分鎮座する創業経営者からの指示であれば安心して集中すれば良いですが、中間管理職の直属上司の言う通りにしていたら

「なんでそんなことをしてるの?○年も働いていてまだできないの?」

と言われる、みたいなことは普通に起こります。

不可逆的で2度と戻らない時間だからこそ、いくらお金をもらって捧げている時間だからと言ってなんでも鵜呑みになって聞いてくれると思ってはいけないと考えるべきかと思います。

また、理由をつけて説明されなかったスタッフは部下の育成や顧客への提案に対して理由をつけた論理的な説明ができなくなり、高い生産性の仕事ができなくなっています。

昨今では労働生産性という言葉が叫ばれてさまざまな設備投資がなされていますが、

”理由をつけて説明をする訓練をする”

と言ったことでコミュニケーショントラブルが減り、営業力が上がり、スタッフの意識とレベル向上が期待できるはずです。

 

次にどのようなコミュニケーションを心がければ良いか実例をもとに考えます。

 

理由をつけた指示の実例

それでは次にどんな風に理由を説明すれば良いか実例を出してみたいと思います。

大半の企業にとって必要な求人を例に説明します。

 

<ケース>
求職者さんが面接に訪れる日にオフィスを綺麗にするように上司から若手スタッフに指示する時をイメージしてください。

若手スタッフは面接があることを知っている状態で上司が部下に指示を出します。

 

レベル1 応接室片付けておいて!
レベル2 応接室が散らかってるから恥ずかしくないようにダンボール片付けて机綺麗にしておいて!
ーーー
レベル3 見られて恥ずかしくないように求職者さんから見える場所を全部綺麗にしておいて!
レベル4 見られて恥ずかしくないように見える場所を綺麗にして挨拶や表情に気をつけよう!
ーーー
レベル5 求職者さんに良い印象を与えるメリットを説明した指示出し(後述)
レベル6 レベル5にさらに相手目線の例えと動機づけを付した指示出し(後述)
レベル7 相手に考えさせた後でレベル6の説明をする(後述)

それではレベルごとに細かく解説します。

 

レベル1 応接室片付けておいて!

これでは応接室を片付ける理由もどこまで片付けたらいいかもわかりません。

例えば、入社当初から応接室にダンボールが普通に置いてある空間で育った社員は”ダンボールがある状態が平時”なのでダンボールを片付けないかもしれませんし、机が汚れてなかったら磨かないかもしれません。

人によっては会社が表彰されたトロフィーは片付ける対象になるかもしれませんし、ならないかもしれません。

求職者さんに良い印象を与えたければダンボールは片付けなくちゃいけないし、会社が表彰されたトロフィーは片付ける対象じゃないですし、良い印象を与えるために机を磨きますが、理由が付されていないことでそのように考えるかどうかが相手の能力に依存されます。

レベル2 応接室が散らかってるから恥ずかしくないようにダンボール片付けて机綺麗にしておいて!

理由が少し付されてだいぶ指示が具体的になりましたね。

これであればダンボールは片付けられるし、そこまで汚れてなくても机を磨いてくれます。
トロフィーはそのまま置いておいてくれると思いますし、最低限恥ずかしくない応接室が出来上がります。

ただ、求職者さんに見られて恥ずかしいから応接室を綺麗にしておいて!

という指示ではこれをやる会社のメリットが見られないし、本当の理由を考えた正しい仕事ができない可能性があります。

これによって

”応接室にあったダンボールが求職者さんから見える場所に移動させただけ”

ということが十分に起こります。

また、ピカピカの応接室への通路にゴミが落ちていても拾う人と拾わない人に分かれます。

それでは応接室を綺麗にした効果がきちんと発揮されません。

 

レベル3 見られて恥ずかしくないように求職者さんから見える場所を全部綺麗にしておいて!

これで理由と全範囲網羅されました。

求職者さんから見える場所からダンボールが消え、机の上とかも整理されます。

ただ、これでパーフェクトかと言うとまだまだです。

求職者さんから見られて恥ずかしくないように、好印象を持ってもらうためのファクター、ハード面がクリアされたに過ぎません。

ハード面をいくら整えてもソフト面がダメでは意味がありません。

この場合のソフト面は何でしょうか?

それは対応するスタッフの対応・見える所にいるスタッフの姿勢・表情・会話です。

ここまで気を配ってもらえないかもしれません。求職者さんはこっちの方を重視して見てる人が多いと思います。むしろ通販慣れしている若者はバックヤードにダンボールが置いてあってもさほど気にせず、心理的安全性が確保された、人間関係が悪くない職場なのかを見ているのではないでしょうか?

 

レベル4 見られて恥ずかしくないように見える場所を綺麗にして挨拶や表情に気をつけよう!

これで全方位網羅されました。

ただ、毎回これを経営者は指示しなければいけないと思うと気が遠くなります。

もちろん面接だけではなくあらゆることにおいてここまで指示出しが必要であれば安心して一人立ちさせられません。

 

レベル5 求職者さんに良い印象を与えるメリットを説明した指示出し

そこで、理由を適切に伝えることで相手の動機づけを促すことを意識します。

そもそも掃除する理由は

”求職者さんの印象をよくするため”

でしょうか。それであればわざわざ時間使って取り組む必要があるのでしょうか?

社員の前ではダンボール置きっぱなしにしているのに、来客の前だけでいいカッコして、社長の見栄でしょ?っていう気持ちがよぎります。

スタッフを腹落ちさせられる適切な理由をしっかりと説明すればこういう考えにはなりません。

 

面接日に万全の体制で臨む理由は、

会社が求める、できる限り優秀なスタッフを確保することで会社の成長に繋げるため

です。

 

これをちゃんと伝え、この掃除や挨拶が会社の成長・収益において重要であると言う理由を理解してもらうことで良い仕事ができるようになります。

逆にこの説明をしてもやらない人は会社の収益・成長に興味がない人になりますので基礎スキルや社歴が長くても評価してはいけない人材ともいえます。

要は

・掃除と愛想笑いが上手な人
・会社の成長に対して前向きに捉えられる人

どちらが会社にとって必要な人なのかと言うことになります。

僕はちょっくらい掃除に漏れがあっても、この説明の後で面接の時に一生懸命笑顔を出そうと努力する人を評価しますし、そう思う人が多いのではないでしょうか?

 

少し話が逸れましたが、

”会社が求める、できる限り優秀なスタッフを確保することで会社の成長に繋げるため”。

これの目的を達成するために、指示を細かく出すことよりも、この理由の因果関係を説明して、自分が言っていることの妥当性を相手に伝えることで自分の仕事の価値を理解することができ、動機づけ要因が引き上がります。

以下のことをもれなくしっかりと伝えることが重要です。

1.求職者さん一人面接に来てもらうことにコストがかなりかかっている

企業にとって求人広告費用の負担はかなり重いです。
人材紹介業に頼むと年収の30%くらいかかったりします。一人面接に来てもらうまでにかなりのコストがかかっていることを認識してもらうことが大切です。

若手社員などはこういったことを認識していないケースも多いかと思います。

 

2.求職者さんは会社のことを観察している

人によりますが多くの求職者さんは面接官だけでなく、対応スタッフ・働いている人の表情・ホワイトボードに書かれていること・汚れ・オフィス家具・応接室の雰囲気などをかなりチェックしています。

自分の人生がかかっている大切な面接なので当たり前と言えば当たり前ですが、毎日同じ会社で働いている社員はついそのことを忘れがちです。

 

3.散らかっている状態・悪い表情を気にしない人と気にする人はそれぞれどんな人か

もちろん全ての人がそんなにチェックしているかと言えばそうではないかもしれません。

ただ、一般的に考えたら

・ある程度オフィスのことをちゃんとチェックする人
→几帳面で、きちっとした人。気配りができる人。片付けなどもできる人

・オフィスの汚れとか働いている人の表情などが気にならない人
→オフィスを汚しても気にならない人。働く仲間に配慮をあまりしない人

と仮説立てられるのではないでしょうか?

自分が気にしないから人のことも気にならない。

つまり、オフィスの清掃状態や働く人の表情によってこれから入社する人の質も引っ張られる可能性があるということになります。


4.入社して欲しい人ほど競合他社からも内定を受けているから競争が激しい

だからと言って顧客でもない求職者さんにそこまで時間と意識をかけて意識する必要があるのか?と相手は考えるかもしれません。

この4がとても大事なのですが、求職者さんは

「御社に入社したい!」

と熱心に訴えかけていますが、他の会社でも同じように言っています。

会社も同じで、次の日には違う面接が入っているかもしれません。

要するに、お互い競争です。

そして、優秀な人ほど多くの内定を獲得でき、条件面と雰囲気が良い所を選ぶことができます。

労働条件はそう簡単に変えられませんが、オフィスの雰囲気をできるだけよくすることは可能です。

体裁だけを整えることに意味を感じられないかもしれませんが、体裁すら整えられない会社は複数内定を取れる優秀な求職者さんに選ばれません。

そして、欲しかった求職者さんはどこに行くかと自社の近隣競合他社である可能性が高いです。

ということはその欲しかった求職者さんは1年後に競合の社員として立ち向かってくることになります。

そのため、少しでも確率を引き上げる努力をすることはとても重要です。

 

以上の理由から、面接日の受け入れ体制を整えることが会社・社員にとって非常に重要であるということを認識してもらうことで相手の仕事の意義を理解してもらい、内発的動機づけを促すことが重要になります。

ただ、そうは言っても1若手社員がこの説明を聞いても当事者意識を持って腹落ちさせられない可能性があります。

腹落ちしてもらうためには相手目線の例え話を交えた説明が効果的です。

 

レベル6 レベル5にさらに相手目線の例えと動機づけを付した指示出し

どれだけ理由を説明したところで、社員は来客時だけ体裁を整えようとする姿勢に対して懐疑的に思うかもしれません。

どうせうちは日頃散らかってるんだからありのままを見せれば良いのではないか。急いで整えても現状を見たらガッカリするでしょう。

という気持ち。

この気持ちになってしまうのはもっともです。

ただ、マッチングアプリとかで恋人を作る過程を考えてもらえたら納得できるかもしれません。

 

付き合った後はパジャマでコンビニだっていくし、家ではメイクを落とします。

ただ、初めてのデートにお互いてきとうな部屋着で行くでしょうか?

相手は付き合いたいと思うでしょうか?

それでも付き合いたいと言ってくれる人はありのままの自分を好きになってくれてる心やさしい人でしょうか?

着飾らない格好でも好きになってくれる人を探すということであればその可能性も全然ありますが、
てきとうな部屋着でやる気ない格好だとそうは思わない人が多いのではないでしょうか。


僕であれば、パジャマみたいな部屋着で初デートに行っても大丈夫な人は、無頓着な人か、何か非があってなかなかマッチングできずに困っている人なのかと思ってしまいます。

もちろん大学とか職場ですごい勝手知ったる仲で、最初のデートの時に部屋着で告白されたとしても付き合うかもしれませんが、面接は違います。面接は初対面一発勝負で、縁もゆかりもなく、マッチングアプリのようにライバルがいる戦いです。

 

と言ったら若いスタッフも自分ごとで腹落ちできるかもしれません。

そう言った会話の引き出しの数も社員教育において大切かもしれません。ただ、そう言った例えをする時は相手の尊厳に配慮し、嫌がらないような言葉選びと表情、関係作りは大切ですので、この例が有効的かどうかは相手によると思います。

あくまで一つの実例として捉えてもらえたらと思います。

 

レベル7 相手に考えさせた後でレベル6の説明をする

ここからさらにハイレベルなのは、相手に対して考えさせて答えが出るように促してあげることです。

丁寧に説明してもらったことよりも自分で気づくことができたことはさらに記憶に定着し、モチベーションも高まりやすいです。

 

再現性と説明の訓練に効果的な要約レッスン

ここまで真剣に理由や相手の動機づけに向き合ったからにはちゃんと理解してもらえているのかを確認する必要があります。

そこで効果的なのは要約です。

ビジネスの現場では感想を求められることがありますが、感想や質問よりも効果的なのは要約と言語化だと思っています。

要約とは、

要:重要点を把握すること
約:短くまとめること

つまり、重要点を短くまとめること

です。

つまり感想とかではなく、こちらが言ったことを相手にそのまま説明し返してもらうという作業です。

これをやると相手が理解できていないことや腹落ちできていないこと、元々の思考に引っ張られて違う解釈をしていることなどが明らかになります。

こちらが説明したことが全然言語化できないことを双方が把握することができます。

もちろんこれはその場で言葉にしなくても構いません。

うちではそのまま口に出してもらうか、後でチャットで要約して送ってもらい添削をします。

それにより、理解を深め、わからなかった点、間違っていた点を正すことができます。

そして、その説明を次の後輩に伝えることができるようになり、きちんと理由を説明し、自分で考えさせる文化が徐々に醸成されていきます。

 

理由を説明する文化によってもたらされる効果

細かな指示によって動く組織は指示以外のことをやらないタスク志向の組織になってしまいます。

逆に理由に重きを置く組織はその理由の方に着目するので理由に紐づく目的志向の組織になります。

目的を達成するためのタスクであるという認識をすると目的達成に必要なタスクを自分で考える癖がつきます。

スーツを着ることが義務と言われたら思考停止してスーツを着続けます。例えヨレヨレ・時代遅れ・汚れていたとしてもスーツ着用という義務を全うできています。

イメージしていない、黒づくめのホストみたいな格好をしてくるかもしれません。

 

それに対して

「受注率を高めるために、清潔感と信頼される服装を心がけましょう。たくさん発注してくれる大切なお客様ほどそう言った所を重視します。たくさん発注してくれる大切なお客様を担当できるスタッフを評価・昇給します」

と言ったら、自分で服装を考える癖が付きます。

このように自分で考える癖により、社内教育や提案力、日々のメール、上司への改善提案などが全て論理的で実現可能性と妥当性が高いコミュニケーションができるようになっていきます。

 

弊社もまだまだ教育途中でお客様にご迷惑おかけすることもあるかと思いますがこれからもこう言った社内教育を続けていきたいと思います。

この記事の監修

アクセルパートナーズ 代表取締役二宮圭吾

中小企業診断士
株式会社アクセルパートナーズ代表取締役 二宮圭吾

Webマーケティング歴15年、リスティング・SEO・indeed等のWebコンサルティング300社以上支援。
事業再構築補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金等、補助金採択実績300件超。
中小企業診断士向けの120名以上が参加する有料勉強会主催。

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