うまくいかない!中小企業がブランド戦略を考えるときの注意点

  • 担当:今井志津
  • 投稿日:2020年04月18日
「ブランド」と聞くと、どんなイメージをおもい浮かべますか? ルイ・ヴィトンのバッグやロレックスの時計、高級外車のベンツなど…さまざまな答えがかえってきそうですね。 実際には高価格なものだけでなく、低価格なものにもブランドはあります。 中小企業や小規模事業者において、「自社のブランドをつくっていくこと」について考えたことのあるかたは、どのくらいいらっしゃるのでしょうか。 そもそもブランド(brand)とは、自分の家畜と他人の家畜を区別するために、焼印を押したことに由来しているといわれています。 今日では、食品や医薬品、美容院、工作機械など、業種を問わず、さまざまなブランドが存在しています。 また、中小企業や小規模事業者などでも、ブランドづくりに取り組んでいる企業が数多くあります。 そこで、「ブランド」とはいったいどういったものなのか、考えてみたいとおもいます。  

1.ブランドとは

かつては、大量生産や大量販売をおこなって、コストダウンをすることで利益を追い求めてきました。 しかし、企業をとりまく環境は変化し、現在では、新たな価値をうみだし、発信し、お客さまをつくっていくことへシフトしています。 そんな中で、他社ではなく、自社の商品やサービスを選んでもらうための考え方のひとつに、「ブランド戦略」というものがあります。 ブランドとは、企業にとっては、ヒト・モノ・カネ・情報とおなじように、重要な経営資源であると考えます。 単に付加価値の高い商品(ブランドバッグなど)につくネーミングではありません。 ですので、ブランド戦略を考えるときには、マーケティング部門にまかせればよいというものではなく、会社全体の意思決定にかかわることなので、経営者が率先してブランドづくりをおこなうことが必要になります。 また、ブランドづくりをするメリットとして、次のようなことが考えられます。 ≪ブランドづくりのメリット≫ ①価格競争に巻きこまれない ②お客さまがリピート購入してくれる ③口コミで新しいお客さまをよびやすくなる ④人材の採用がしやすくなる など 以上のことから、中小企業や小規模事業者においても、「自社ブランド製品をもたないから、ブランドづくりは関係ない」という商品面の「ブランド」でなく、企業名を「ブランド」にする「企業ブランド」をつくりあげて、受注をふやすという視点をもつことが、大切になってきます。  

2.ブランドを構築する

品質にはそれほど大きな差がない多くの商品やサービスのなかで、「ブランド」は、「とんがっている部分」と表現されます。 ※イメージ図 この「とんがっている部分」であるブランドづくりを、中小企業や小規模事業者は、どのようにおこなえばよいのでしょうか。 ブランドは「お客さまが決めるもの」です。企業にとっては、「お客さまにわかりやすいようにメッセージを伝えること」が重要になってきます。 そこで、いくつかの事例をあげてみたいとおもいます。

事例①製造業

工具を製造しており、海外に工場を立ち上げたのを機に、自社のブランドについて再考する。社外に対し、全社員が自社のブランドを説明できるくらい、統一したものにすることを目標にする。 社内外のアンケート調査を通じて、現在取引している業界以外の認知度が低いことが明らかになる。今後、認知度の低い業界に販路を拡大していくために、自社のブランドをPRする方法が必要で、コンサルティング会社に依頼した。また、社内に対しても、ブランド宣言をおこないブランドブックを配布し、社員の忠誠心やモチベーションを高める工夫をしている。さらには、自社製品の技術資料をお客さまに配布したり、技術をお客さまにレクチャーする講習会を開催するなど、技術サービスを強化し、ファンをふやすような取り組みをしている。  

事例②製造小売業

もともと地元のゼネコンや工務店の下請けとして、造作家具を製造していた。しかし、お客さまから直接お話を聞き、自ら企画や設計、デザインを手がけ、素材にこだわった良い家具づくりの仕事へと転向する。 地元の料理店などの新規オープンや店舗リニューアルなどを手がけたことで、インテリアのコーディネートなどが評価され、お客さまの口コミで広がっていき、ブランドにつながった。 また、自らも地元メディアへ積極的に売り込みをして、商店街などと一緒になって良くなろうとしている。  

事例③小売業

家電大型店と差別化し、生き残るために改革をはじめた家電店。まずは、お客さまを半分以下に絞り込み、良いお客さまだけを残した。それにより、お客さまとのパイプの太さを2倍にすることができた。さらに、お客さまを9ランクに分け、上位5ランクまでをイベントに招待し、得意客になるほど良いサービスを受けられるお得感を演出した。 ただ、売りっぱなしにすることはなく、アフターサービスはもちろんのこと、電池一本からの宅配サービスやちょっとした送迎など、きめ細かいサービスを評価されている。 このように、効率をあげるよりも、お客さまのサービスを重視して、お客さまをがっちりと掴み、ブランドづくりをおこなっている。  

事例④サービス業

店舗のハード面を一括で受託する、トータルメンテナンスの会社。大型案件の受注を機に、サービスの質とはなにか、顧客のニーズにこたえるとはどういうことかを身をもって知る。顧客のニーズとはわがままの塊で、これにどう対応するかがポイント。とにかく、顧客のニーズに対応し尽くすことで、信頼を勝ちとるしかない、と考える。積み重ねた信用がブランドになっている。それだけに、つきあうお客さまは選別し、同じ目線で議論でき、サービスが何かをわかっているお客さまに限っている。 下請けはやらずに、お客さまと直にやる。そしてトップセールスにこだわり、自社の理念まで理解してもらう。 このようにして、お客さまのニーズをいつも的確に見つづけている。   それぞれの会社において、独自のやり方でブランドの構築をしています。共通しているのは、常に、お客さまを主体にして、お客さまのニーズ=要望にこたえようとしているところだとおもいます。 このように、自分の信念を貫き、お客さまのためにサービスをして、信用をコツコツと築きあげていくことこそが、「ブランド」に他ならないのです。  

3.ブランドづくりの注意点

ブランドをつくることは、なかなか成功しないことも多いようです。注意点をまとめてみました。 1)ブランドをつくることが目的になってしまい、品質をおろそかにしてしまう 2)ブランドという言葉が先行してしまい、どのようなブランドをつくるのかという方向性がはっきりしていない 3)お客さまのニーズに沿わない商品は、うまくいかない 4)統一性や一貫性がないと、よいイメージをつくることができない 5)ブランドを無関係に広げると、その価値が低くなる 6)「なんでもある」といって焦点をしぼらないと、ブランドはできない 7)お客さまの声をきかないと、独りよがりになる 8)価格競争になる商品は、ブランドにならない などが考えられます。 ブランドをつくるときには、チェックしてみてくださいね。  

4.まとめ

ブランドづくりについて考えてきました。 以上はほんの一例であり、ほかにもいろいろな考え方があります。 気づいた点としては、「自社のブランドをつくろう!」とおもっても、すぐに作れるものではないということです。 時間をかけて、サービスを提供し信頼を蓄積して、つくりあげていくものだということがわかりました。 ただ、自社が今後生き残っていくためには、場当たり的ではなく、しっかりとブランド戦略に取り組むことが重要です。これからのブランドづくりについて、考えるきっかけになればとおもいます。 今後も、中小企業や小規模事業者のみなさまの、ゴーイングコンサーン(企業をつづけていくこと)に役立つ情報をお伝えできればとおもっています。