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企業型確定拠出年金(企業型DC)ってなに?制度を分かりやすく解説

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「老後資金として2,000万円が必要」という言葉を耳にしたことがある方は、たくさんいらっしゃるのではないでしょうか。2017年に総務省が公表したアンケート調査「家計調査報告」のデータをもとに、老後30年間に平均的な生活をするために必要なお金が2,000万円だと言われています。この「2,000万円問題」を皮切りに、老後の資産作りのために「確定拠出年金」の加入を検討する方が増えました。

そこでこの記事では、「企業型確定拠出年金」について詳しく知りたい方向けに、しくみやメリット・デメリットを紹介します。

「企業型確定拠出年金の基礎的なことを知りたい」という方はぜひ参考にしてみてください。

 

企業型確定拠出年金(企業型DC)とは?

企業型確定拠出年金とは、確定拠出年金のひとつで、一定の掛金を拠出・運用し、その運用結果によって将来の年金額が決まる年金制度です。この章では、企業型確定拠出年金のしくみを解説します。

企業型確定拠出年金は企業年金制度のひとつ

企業型確定拠出年金は、厚生年金や国民年金といった公的年金に上乗せして給付を受けられる企業年金制度のひとつです。

企業年金制度とは、公的年金を補完することを目的として、企業が任意で導入している年金制度をいいます。

 

企業型確定拠出年金は企業が掛金を拠出する

企業型確定拠出年金は、企業が拠出した掛金を、従業員(加入者)が運用し、従業員が給付を受けます。

似たような制度に個人型確定拠出年金(iDeCo)があります。個人型確定拠出年金は、加入者自身が掛金を拠出することに対し、企業型確定拠出年金は企業が掛金を拠出することがポイントです。個人型確定拠出年金については、こちらの記事で詳しく解説しておりますので、参考にしてください。

年金の受け取り開始は原則60歳から

60歳以降に老齢給付金を受け取ることができます。

ただし、以下に該当する場合は60歳未満でも給付金が受け取り可能です。

 

・加入者が運用中に障がい者となった場合(障害給付金)

・加入者が亡くなった場合(死亡一時金)

企業型確定拠出年金の加入対象者は?

企業型確定拠出年金の加入対象者は、以下のすべてに該当する方です。

・企業型確定拠出年金を導入している企業の従業員(役員も含む)

・厚生年金保険の被保険者

・70歳未満(規約で一定の年齢以下と定めることは可能)

※従前は60歳未満を加入対象者としていましたが、2022年5月から加入年齢が引き上げられました。

 

掛金の拠出限度額はいくら?

企業が拠出できる掛金は年間で限度額が定められています。

掛金の拠出限度額は以下の通りです。

確定給付型※の実施の有無

拠出限度額

実施している場合

年額330,000円(月額27,500円)

実施していない場合

年額660,000円(月額55,000円)

 

※確定給付型年金とは、将来受け取る年金の額があらかじめ決まっている年金制度をいいます。例えば、厚生年金基金や確定給付企業年金があります。

iDeCoとの併用はできる?

企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金(iDeCo)の両方に加入することが可能ですが、個人型確定拠出年金の掛金拠出限度額が少なくなります。

ただし、企業型確定拠出年金においてマッチング拠出を行っている場合には、併用はできません。

マッチング拠出とは、掛金拠出限度額を超えない範囲で、企業が拠出する掛金と同額まで、従業員(加入者)が掛金を拠出できるしくみを指します。

 

企業型確定拠出年金(企業型DC)のメリット

従業員(加入者)側と会社側それぞれからみた企業型確定拠出年金のメリットを紹介します。

従業員(加入者)側のメリット

従業員(加入者)側のメリットは以下の3つがあります。

・3つの税制優遇が受けられる

・手数料を会社が負担してくれる

・離職時には年金資産を持ち運ぶことができる

それぞれ詳しく解説します。

 

メリット①:3つの税制優遇が受けられる

税制優遇によって、所得税と住民税を軽減することができます。

以下の3つの税制優遇が受けられます。

・掛金は個人の所得としてみなされない

企業が拠出した掛金は、従業員の給与とはならないため、所得税および住民税は課されません。なお、マッチング拠出において、加入者が拠出した掛金は全額所得から控除されます。

 

・運用益に税金が課されない

 掛金を運用することにより運用益が発生しますが、運用益は非課税で、さらに再投資が可能です。通常の投資信託では、運用益に対し20.315%の税金が課されます。通常の投資信託よりも再投資できる金額が多くなるため、最終的に手元に残るお金が増える可能性が高いです。

 

・給付金の受給時に所得控除が受けられる

 以下の所得控除が受けられるため、場合によっては無税で給付を受けることが可能になります。

一時金で受給した場合:退職所得控除

年金で受給した場合:公的年金等控除

 

このように所得税と住民税が軽減されることにより、老後のための資金をより多く確保することが可能です。

メリット②:手数料を会社が負担してくれる

確定拠出年金を導入し、運用するためにかかる各種手数料を会社が負担してくれます。個人型確定拠出年金(iDeCo)や通常の投資信託であれば、各種手数料を加入者自身で負担しなければいけません。コストをかけずに資産を運用できるという点は、企業型確定拠出年金にしかないメリットだといえます。

 

メリット③離職時には年金資産を持ち運ぶことができる

離職する際には、自身が持っている年金資産を持ち運ぶ(移管)することができます。

具体的には、以下のように年金資産が動きます。

企業型確定拠出年金を導入している会社へ転職する場合

転職先の企業型確定拠出年金へ移管

企業型確定拠出年金を導入していない会社へ転職する場合

iDeCoへ移管

自営業者、公務員、専業主婦(夫)になる場合

iDeCoへ移管

運用期間が長ければ長いほど年金資産が増えるため、年金資産を引き続き運用できる点は重要でしょう。

会社側のメリット

会社側のメリットは、以下の2つがあります。

・掛金を全額損金計上できる

・従業員の満足度向上につながり、人材の定着率があがる

それぞれ詳しく解説します。

メリット①:掛金を全額損金算入できる

拠出した掛金は、全額「福利厚生費」として損金算入できるので、法人税の軽減が可能です。また、企業型確定拠出年金は役員も加入でき、役員に対して拠出した掛金も損金算入できる点もポイントです。

メリット②:従業員の満足度向上につながり、人材の定着率があがる

会社に対する従業員の満足度が向上すれば、人材が定着しやすくなります。老後資金に不安を抱える従業員にとって、企業型確定拠出年金を導入している会社は魅力的です。また、「企業型確定拠出年金が導入されている会社に就職したい」という求職者を確保できる点も利点のひとつと言えるでしょう。

 

企業型確定拠出年金(企業型DC)のデメリット

従業員(加入者)側と会社側それぞれからみた企業型確定拠出年金のデメリットを紹介します。

従業員(加入者)側のデメリット

従業員(加入者)側のデメリットは以下の3つがあります。

・60歳までは資産を引き出すことができない

・元本割れするおそれがある

・運営管理機関を選ぶことができない

それぞれ詳しく解説します。

デメリット①:

原則60までは資産を引き出すことができません。選択制の企業型確定拠出年金(給与から掛金が減額される)やマッチング拠出を行う場合には、注意が必要です。急にまとまった資金が必要になった際に困らないように、無理のない範囲で掛金を設定することが重要です。

デメリット②:元本割れするおそれがある

選択する運用商品の運用実績によっては、元本割れするおそれがあります。企業型確定拠出年金では、「定期預金」「保険商品」「投資信託」の中から、従業員が自分で商品を選んで運用します。定期預金や保険商品は元本が保証されていますが、投資信託は元本が保証されていないため、慎重に選択する必要があります。

デメリット③:運営管理機関を選ぶことができない

運営管理機関は会社が決定するため、従業員は運営管理機関を選べません。運営管理機関によって、取り扱っている運用商品が異なるため、従業員自身の好みの運用商品がないおそれがあります。

 

会社側のデメリット

会社側のデメリットは以下の3つがあります。

・掛金を拠出しなければいけない

・手数料がかかる

・従業員に対して投資教育を行わなければいけない

それぞれ詳しく解説します。

 

デメリット①:掛金を拠出しなければいけない

会社が従業員の掛金を拠出しなければいけないため、掛金の原資を準備する必要があります。万が一、資金繰りが悪化した場合でも、企業型確定拠出年金の制度を停止することは原則としてできません。ただし、選択制企業型確定拠出年金であれば従業員の給与から掛金を差し引くことができるため、会社側の実質的な掛金負担はありません。

デメリット②:手数料がかかる

企業型確定拠出年金を導入し、運用するためには各種手数料がかかります。各種手数料は従業員ではなく会社が負担するため、コストがかかる点にご注意ください。

各種手数料の一例としては、以下のものがあります。

タイミング

名称

金額

導入時

口座開設手数料

3,000円/1人あたり

運用時

事業主手数料

15,000円/月

運用時

加入者手数料

300円/月、1人あたり

手数料の金額は、金融機関によって異なりますので、目安としてお考えください。

デメリット③:従業員に対して投資教育を行わなければいけない

企業型確定拠出年金を導入した会社には、従業員に対して継続的な投資教育を行うことが義務付けられています。定期的に投資に関するセミナーを開催して、従業員の投資に対する知識を高めなければいけません。セミナーを開催する担当者は、投資に関する専門的な知識が求められるため、常に勉強しておく必要があります。

 

まとめ

老後の資金作りのための制度のひとつである「企業型確定拠出年金」について、制度のしくみやメリット、デメリットを紹介しました。

今回の記事のポイントは、以下の3つです。

・企業型確定拠出年金の掛金を拠出する者は、企業(事業主)

・2022年5月から加入年齢が引き上げられ、70歳まで加入可能に

・会社側、従業員側双方に税制優遇というメリットがあるが、紹介したデメリットがあることを理解したうえで導入、加入する

企業型確定拠出年金の導入、加入の検討をする際には、ぜひこの記事を参考にしてください。

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この記事の監修

アクセルパートナーズ 代表取締役二宮圭吾

中小企業診断士
株式会社アクセルパートナーズ代表取締役 二宮圭吾

WEBマーケティング歴15年、リスティング・SEO・indeed等のWEBコンサルティング300社以上支援。
事業再構築補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金等、補助金採択実績300件超。
中小企業診断士向けの120名以上が参加する有料勉強会主催。

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