愛知県内のサロン・飲食店がサブスク型ビジネスをはじめる際に知っておくべきこと
- 2020年03月26日
今井志津
『購入させる時代から体験させる時代へ』
音楽や動画の配信、スポーツクラブ会員サービスなど、様々なサービスに導入されている、サブスクリプション。定額制のサービスのことで、「サブスク」と省略されます。
「サブスク」型のサービスが増えている時代に求められる、カスタマーサクセスという言葉を知っていますか?
このカスタマーサクセスは、店舗ビジネスかオンラインビジネスかを問わず、活用することができるようです。
愛知県内で、飲食店やヘアサロン、エステサロンを経営されているかたが、今のマーケティングを見なおすきっかけになるかもしれません。
カスタマーサクセスについて、みていきましょう。
目次
1.カスタマーサクセスとは
カスタマーサクセスと対比する言葉として、カスタマーサポートという言葉があります。
カスタマーサポートとカスタマーサクセスをくらべてみると、お客さまに対しての向き合い方や目的が異なっています。
【カスタマーサポート】
コールセンターをイメージしてみてください。
問い合わせやクレームなどがあって、はじめてアクションが始まります。
受動的で、「守り」の姿勢です。
【カスタマーサクセス】
カスタマーサクセスの目的は、お客さまを成功に導くことです。
たとえば、法人向けに毎月定額でサービス提供している企業であれば、契約開始はゴールではなくスタートになります。契約後にフォローができていないと、お客さまの満足度は低下し、解約になることも想定されます。
提供サービスを通じた、課題の解決が重要なポイントです。お客さまに寄り添い、伴走することで、成功体験のプランニングを実施します。
能動的で、「攻め」の姿勢です。
「サブスク」型サービスを提供するビジネスが増えたことで、お客さまと継続的に良い関係性を持ちつづけることが、とても重要になってきました。
お客さまの成功を積極的に支援することで、信頼を勝ちとることができます。そして、継続的に利用してくれるようになり、売上につなげることができます。
では、カスタマーサクセスにおける、具体的なポイントをみていきましょう。
2.新規のお客さま?既存のお客さま?
『あなたはヘアサロンの経営者です。新規のお客さまが来店する前と、来店した後、どちらにコストや手間をかけますか?』
多くのかたが、「来店する前」と答えるのではないでしょうか。「■■■ビューティーに月●●万円支払って集客しています」という返事が聞こえてきそうです。
もし仮に、集客費用に月10万円を使い、10人来店したとすると、1人あたり1万円の広告宣伝費を使っていることになります。ほとんどの場合、お客さまにリピートしてもらわないと、1万円を回収できないことがわかります。
①1:5の法則
1:5の法則とは、新規のお客さまを獲得するコストは、既存のお客さまのコストの、5倍かかるという法則です。
新規のお客さまは、獲得するコストが高いにもかかわらず、利益率は低いので、新規のお客さまの獲得だけにひたすら広告宣伝費を払い続けるのは、ビジネスを失敗させることにつながります。
そこで、フォーカスするのが既存のお客さまです。
一度商品やサービスを購入しているので、少ないコストで、ふたたび商品やサービスを購入してくれる可能性が高くなります。
今まで、新規のお客さまの獲得に使っていたコストを、これからは、既存のお客さまへの維持コストに回したほうが、効率的に利益につなげられる可能性があります。
②LTV
LTVとは、Life Time Valueの頭文字をとったもので、顧客生涯価値といいます。
ひとりのお客さまが、生涯にわたって使う、商品やサービスの総額のことです。できるだけ自社商品を買ってもらい、お客さまにとって自社商品の占める割合がふえることで、自社の価値をあげることができます。
お客さまに、できるだけ自社商品を買ってもらうためには、お客さまとの関係性をどれだけ深くしたかが重要になってきます。関係性の深さが、売上につなげるのです。
③CRM
CRMとは、Customer Relationship Managementの頭文字をとったもので、顧客関係管理または顧客関係性マネジメントといいます。
商品やサービスを買ってくれたお客さまをリピーターにして、さらにファンになってもらえるように働きかけることをいいます。
たとえば、ヘアサロンでは、お客様の住所やメールアドレス、誕生日、髪質など、多くのお客様情報をもっている場合が多いです。その情報を活用して、お誕生日メールを送信したり、来店へのお礼ハガキを送ったりして、一人ひとりにアプローチしていく、といったことが当てはまります。
お客さまはどんなことをされたらうれしく感じるか、ということを丁寧に考えて、実行していくことが大切です。
ここまでで、新規のお客さま以上に、既存のお客さまに対して、深い関係性をつくっていくことが、ビジネスを成功させるうえで重要なことを感じていただけましたでしょうか。
3.サブスクモデルとコンスタントモデル
既存のお客さまとの関係性を維持していくためのマーケティング活動このことを、リテンションといいます。さきほどのCRMは、その手段のひとつです。
1:5の法則でみたように、新規のお客さまの獲得にはコストがかかるので、いかに既存のお客さまが離れていかないかに注力することが大切です。
リテンションモデルには、サブスクモデルやコンスタントモデルというものがあります。
①サブスクモデル
冒頭のとおり、定額制で商品やサービスを提供することです。
具体的には、
1)定額制のプライベートジム
2)メールマガジンの定期購読
3)オンラインサロンやスクール
などがあります。
②コンスタントモデル
定額制ではなくても、毎月定期的に、コンスタントに購入するものをいいます。
具体的には、
1)アマゾンでの毎月の購入
2)課金制のゲーム
3)UBERのアプリ利用
などがあります。
4.今後のビジネスのヒント
『購入させる時代から体験させる時代へ』
CDの購入はiTunes Storeからのダウンロードに、車の購入はUBERの利用に、と「購入させるビジネスモデルから体験させるビジネスモデルへ」と変化しています。
たとえば、
「あなたがダイエットのために、スポーツジムへ入会します。どちらが入会しやすいですか?」
1:入会金3万円で6カ月利用
2:入会金なし。月々5,000円
多くのかたは、「2」を選ぶでしょう。
入会のハードルを低くして、いかにリピートしてもらうかに時間やコストをかけるかが、今後は重要になってくるのです。
極端にいえば、初回が無料であれば、多くの集客をすることができます。そこから、お客さまの感情を刺激して、もう1回来たいと思ってもらうにはどうしたらよいのか、つまりリピートしてもらう施策を考えることが大切なのです。
≪ビジネスを考えるうえでの参考例≫
①サービスを設計する
頭で考えたサービスはヒットしないことがおおいので、無料で試してもらう機会をつくる
②データを収集する
①に参加した人から、感想や意見を聞き、アイデアベースで情報をあつめる。
自分が考えもしなかったニーズをつかめる可能性がある。
③サービスを改善する
①②を続けて、問合せやクレームなどのデータを蓄積し、サービスをブラッシュアップしていく。
④サービスを完成させる
③で蓄積したデータや機能の要望を明確にして、サービスを完成させる。
⑤新規事業へつなげる
サービスの完成後、現在のお客さまの特性を見つけだし、そのニーズにあった新たな事業へとつなげる。
≪次の来店をうながす具体例≫
■1カ月食べ放題メニュー(サブスクモデル)
焼肉屋で、1カ月食べ放題11,000円/月を実施する。
■料金支払いのチャージ制(コンスタントモデル)
エステサロンで初回に10,000円チャージし、2,000円割引して支払いが8,000円になり、2,000円の残高が残るため、次回の来店をうながす。
≪お客さまの満足度をあげる具体例≫
■誕生日登録を活用
誕生日登録をした顧客データをつかって、電話やメールなどでお祝いをつたえて、お客さまの満足度をあげる。
■お客さま個人への対応
焼肉店で、コレステロール値が高いため脂身を控えるお客さまに対し、脂身の少ないお肉を用意することで喜んでもらい、サービスの付加価値をあげて、お客さまの満足度につなげる。
以上は一例ですので、ご自身のお店に来店するお客さまにあった施策を、考えてみてくださいね。
5.まとめ
いかがでしたか。
今までは、新規のお客さまが購入するまでが勝負の、「購入させるビジネスモデル」が主流になっていました。
今後は、既存のお客さまとの関係性を深くして、満足していただく施策を考えていくことが重要ということがわかりました。
これを機会に、カスタマーサクセスやLTV、CRMなどといったマーケティング用語とその内容について、理解していただければとおもいます。
ご自身の周りをみても、「これはリテンションモデルだ!」と気づくことがあるのではないでしょうか。
今後のビジネスのヒントになることを期待しています。